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Dealing with Climate Change 気候変動への対応

気候変動に関するリスクと機会

I1_気候変動に関するリスクと機会

気候変動に関するリスクと機会

当社グループへの財務影響としては、気候変動に対する政策および法規制が強化されカーボンプライシングが導入、強化された場合等、GHG排出量に応じて追加費用が発生します。また、世界的な脱炭素社会への移行の流れへ乗り遅れた場合には、販売機会の損失等により企業価値の低下を招く可能性があります。今、世界はパリ協定に基づき急速にカーボンニュートラルの社会へ移行する動きが高まっています。当社はこのような社会環境の変化に対して迅速に対応し、新たな価値を提供していく必要があると考えています。
具体的には、GHG削減目標を設定し、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの使用を拡大することにより、当社グループの事業活動により排出されるGHGを着実に削減していきます。さらに、当社グループ製品の市場競争力を向上するため、製造プロセスの改善や環境配慮型製品の開発、CCUS等環境負荷を低減する技術開発も積極的に推進しています。

  • ※ CCUS:Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)

物理的リスクについては、気候変動に関連すると考えられる激甚化した豪雨・洪水や高潮・渇水等の急性および慢性リスクによる被害等の水リスクを含めて全社リスクマネジメント活動において管理しています。
また、移行リスクについては、気候変動に関する政策等の強化により、省エネ・GHG排出削減に貢献する技術や製品・サービスの需要が拡大すると想定しています。当社グループは、脱炭素化に貢献する素材・製品・技術の開発、地熱発電等の再生可能エネルギーの開発・利用促進、CO2回収・有効利用に関する技術開発、保有する山林の保全活動等に取り組むことで、経済的価値と社会的価値の両立を目指していきます。

シナリオ分析

当社グループは、2021年3月、気候変動が当社グループの事業に与える影響(リスクと機会)について把握し、リスクの低減および機会の獲得に向けた対策を検討するため、シナリオを設定し、その分析を実施しました。現在、次期中期経営戦略との整合性を取りながら、シナリオ分析の更新、指標・目標および戦略の検討を進めています。

リスク・機会およびその対策の特定プロセス

気候変動が進行するシナリオを設定し、事業への影響を分析、リスクの低減、機会の獲得に向けた対策を検討

リスク・機会の抽出 事業に関連する気候変動リスク・機会として、移行リスク・機会と物理的リスクを抽出
重要リスク・機会
要素の特定
抽出したリスク・機会について、事業へのインパクトや事業戦略との関連性、ステークホルダーからの関心度合い等を勘案し、重要度の高いリスク・機会要素を特定
事業への影響を分析 重要リスク・機会について事業への影響度を分析
分析・評価では、2℃上昇と4℃上昇するシナリオデータを参照
  • 【参照シナリオ】 国際エネルギー機関(IEA)持続可能な発展シナリオ(SDS)、2℃シナリオ(2DS)気候変動に関する政府間パネル(IPCC):共有社会経済パス(SSP)、代表的濃度経路シナリオ(RCP) 等
対策および指標・目標の検討 リスクの低減、機会獲得に向けた対策を検討
モニタリングする目標として、GHG排出削減目標を設定

シナリオ分析 – 想定する2030年~2050年の世界

分析で想定する世界

2℃シナリオ(持続可能な社会) 4℃シナリオ(成行きの社会)
  • 今世紀末までの平均気温の上昇を2℃未満に抑え、持続可能な発展を実現させるために、野心的な政策や環境技術革新が進む
  • パリ協定に則して各国が目標達成に向けた政策を実施するも、各国の協調、環境技術開発、エネルギー転換等が不十分なものとなり、今世紀末までの平均気温が4℃程度上昇する
  • 脱炭素社会への移行に伴い、事業に影響を及ぼす社会変化として、以下の世界を想定
  • 気候変動緩和策が奏功せず、成り行きで温暖化が進行する以下の世界を想定
【想定する世界】
  • グローバルでの炭素価格の設定と価格上昇
  • 化石燃料から再生可能エネルギーへの移行の進展
  • モーダルシフト、EVシフトの進展
  • 公共交通機関、シェアリングの利用需要の増加
  • ユーザーによる脱炭素製品の選好
  • 循環型社会への移行、廃棄物リサイクル率の向上
  • CO2回収・貯留・有効利用技術の確立・実用化
【想定する世界】
  • 化石燃料依存、エネルギーコストの増加
  • 新興国・途上国での著しい経済成長
  • CO2排出量の少ない移動手段へのシフト鈍化
  • 風水災の激甚化、災害廃棄物の発生量増加
  • 水ストレス・熱ストレスの深刻化

シナリオ分析 – 分析テーマ一覧

分析テーマ 分析内容 分析対象事業
  1. 直接的な炭素税負担の変化
  • 2℃未満の世界に向けて、GHG削減の取り組み推進に関わるコストの把握
  • GHG削減目標の可否によるコスト差等を基に、削減に向けた設備投資の検討
全事業共通
  1. 事業拠点の水災リスクの変化
  • 当社事業拠点における河川氾濫、高潮による浸水リスクの財務的影響の把握
全事業共通
  1. EVシフトによる当社製品の需要の変化
  • 2℃未満の世界に向けて、EV需要の変化に応じた当社電子材料の需要の変化の検討
高機能製品
  1. モーダルシフト、EVシフト、輸送機器の軽量化に関わる当社製品需要の変化
  • 輸送セクターの低炭素化、2℃・4℃の世界における交通・輸送手段の利用の見通し等を踏まえ、加工事業の関連製品の需要や市場成長性を把握
加工事業
  1. 循環型社会への移行によるE-Scrapリサイクルの需要の変化
  • E-Scrap発生量の見通し等を踏まえ、E-Scrapリサイクルの需要と市場成長性の把握
金属事業
  1. 家電リサイクルに関わる需要の変化
  • 代替フロンの普及や、気温の上昇に伴う2℃の世界における家電リサイクル事業の需要や市場成長性を把握
環境・エネルギー事業
  1. 再生可能エネルギーの需要の変化
  • 影響度の高い外部環境の変化に伴う2℃の世界における再生可能エネルギー事業の需要や市場成長性を把握
環境・エネルギー事業

シナリオ分析 – 分析結果(概要)

図

1.直接的な炭素税負担の変化(全事業共通)

リスク要素:炭素価格税制度の導入・強化(操業コスト)

想定する世界と事業影響

炭素価格制度の導入・強化による生産コストの増加

  • GHG排出量に対する課税強化、電力価格上昇によるエネルギーコスト増加
  • グリーン電力証書の調達額や排出権取引コストが増加
  • 総エネルギーコストは、2019年度比で2030年度に1.13倍、2050年度には1.33倍
影響分析

炭素価格は、当社のコストの増加要因になる。炭素価格の影響は社会全体にも及ぶが、当社の製品価格への転嫁が進まない場合は収益低下となるリスクとなる。

図

今後の戦略と対応
  • 工場から排出されるCO2の回収技術の検討、CCUS等の革新的な技術の実現可能性やコスト面について注視していく
  • 省エネを推進、電化への移行や燃料転換の可能性の検討を進める
  • 2030年度までにGHG排出量を47%以上削減(2013年度比)する
  • 電力由来の排出量削減に向けて、再生可能エネルギーの導入を推進する
  • ※ コストは、セメント事業、アルミ事業を除いた総エネルギーコストとし、温室効果ガス目標は、セメント事業、アルミ事業を除いた温室効果ガス削減目標としています。

2.事業拠点の水災リスクの変化(全事業共通)

リスク要素:洪水、高潮、干ばつ等の水リスクの増加

想定する世界と事業影響

世界的な災害頻度の高まりによる損害額の増加

  • 災害の発生頻度の高まりにより物的損害、休業損害等が増加
  • 河川氾濫リスクの高い拠点での物的損害額は、国内拠点で現在比で2050年度に約1.1倍、2085年度に約4倍、海外拠点(タイ)で同年度約2.8倍、約25倍
影響分析

災害による損害の増加は、当社のコストの増加要因になる。世界的に気温上昇が抑えられず、4℃シナリオの世界に向かった場合、拠点のロケーションによっては、操業およびサプライチェーンに深刻な影響が生じるリスクがある。

図

今後の戦略と対応
  • 短期的なリスクは、世界資源研究所(WRI)が開発した水リスク評価ツール「Aqueduct(アキダクト)」による評価、および、定期的なヒアリングにより事業所個別の詳細な水リスク状況を把握し、リスクが高い箇所については順次対応を進める
  • 中長期的なリスクは、IPCC等における最新の予測情報の把握、当社およびサプライチェーンにおける水災リスクについての評価を基に、適切な対策を推進する

3.EVシフトによる当社製品の需要の変化(高機能製品)

機会要素:EV販売台数の増加

想定する世界と事業影響

脱炭素化に向けたEV関連製品の急速な需要拡大

  • 2030年度に向けて自動車全体の販売台数が増加、自動車向け端子・コネクタ需要は2019年度比で2030年度に約1.6倍、2050年度に約2.1倍に拡大
  • EV自動車の2030年度の販売台数は、2019年度比で約22倍増加
影響分析

EVの販売台数は大幅に増加し、当社の銅加工・電子材料製品等の大幅な需要拡大が予測される。関連製品の生産体制強化により需要を取りこむことで、売上の拡大につながる機会となる。

図

今後の戦略と対応
  • 2030年度時点での新規HV・EV向け銅部材の販売量を2019年度比1.3倍以上、次世代自動車・環境対応製品の売上高を2019年度比3倍以上を目指す
  • 急拡大するEV向け製品需要に応えられる供給体制を構築するための設備投資や製品開発等を行い、脱炭素社会への移行に貢献していく

4.モーダルシフト、EVシフト、輸送機器の軽量化に関わる当社製品需要の変化 (加工事業)

リスク要素:モーダルシフト等に伴う加工製品市場の急変

想定する世界と事業影響

EV自動車比率の増加によるエンジン向け切削工具の需要減少

  • EV販売台数の著しい増加、軽量化素材の利用率の増加
  • エンジン搭載車の生産数減少(2030年度時点で2019年度比0.76~0.96倍)が見込まれ、エンジンやトランスミッション向けの切削工具の売上は減少
影響分析

電動化・軽量化の関連市場の拡大に伴う難削材向け工具の需要の増加が予測されることから、製品構成を見直し、需要を取り込むことで売上拡大の機会となる可能性がある。一方、現在の主力製品であるエンジン搭載車向け切削工具の売上が減少するリスクがある。

図

今後の戦略と対応
  • EVバッテリー関連製品、難削材向け工具等、2℃シナリオの世界に向けて拡大する需要に応える製品を開発・供給し、脱炭素社会への移行に貢献していく
  • 自動車向け製品市場は、自動車の動力源の種類によって製品需要の拡大・縮小傾向が異なるため、EVシフトの動向を注視していく。また、自動車産業に代わる新たな市場の開拓も進めていく

5.循環型社会への移行によるE-Scrapリサイクルの需要の変化(金属事業)

機会要素:E-Scrapリサイクルの需要拡大

想定する世界と事業影響

各国の経済成長に伴う廃電子機器リサイクル需要の増加

  • 世界の車両販売台数の増加(2030年時点で2019年比で1.1倍)、自動車のEV比率の増加、GDPの成長により、廃自動車由来のE-Scrapは増加する
  • デジタル化の進展による電子機器需要増により有価金属需要はさらに高まる
影響分析

2030年における世界のE-Scrap発生量は、2019年比142%に増加する。当社のリサイクル処理能力を増強することにより、当社のE-Scrap処理量が増加し、売上増加の機会となる。

図

今後の戦略と対応
  • 処理能力増強、前処理の高度化等の技術開発による受け入れ機会の拡大を検討し、E-Scrapリサイクル事業に注力し、循環型社会の構築に貢献していく
  • 今後、電子基板中のPGM含有量の低下や国内EV販売台数の増加が見込まれることから、有価金属に係る周辺環境を注視していく
  • ※ PGM:白金族金属

6.家電リサイクルに関わる需要の変化(環境・エネルギー事業)

機会要素:家電リサイクル需要の増加

想定する世界と事業影響

温暖化・エネルギーコスト上昇による省エネ家電への買い替え頻度の増加

  • エアコンの長時間使用による劣化進行、世帯当たりのエアコン保有量の増加
  • 低炭素規制、エネルギーコスト増加による買替え頻度の増加(廃家電量増加)
  • リサイクル規制の強化による廃家電回収率の上昇
影響分析

気温上昇、世帯数の変化、炭素規制およびリサイクル規制の強化等によりエアコン等の廃家電量が増加することが見込まれる。これに伴い、当社の家電処理量も増加し、売上増加の機会となる。(2050年度で2019年度比209%)

図

今後の戦略と対応
  • 家電リサイクル処理台数増量に向けた設備の自動化、回収物の価値向上のための工程改善に取り組み、事業拡大を図る
  • 特に処理量の増加が大きいと予測されるエアコン、薄型テレビ等の市場規模拡大を踏まえ、市場動向を注視していく
  • 海外市場の動向を注視しつつ、リチウムイオン電池や太陽光パネルのリサイクル等の新たなリサイクル事業を創出する

7.再生可能エネルギーの需要の変化(環境・エネルギー事業)

機会要素:再生可能エネルギーの普及・需要増加

想定する世界と事業影響

ネットゼロ社会に向けた、再生可能エネルギー市場の中長期的拡大

  • 再エネの普及状況、需給関係により、環境価値は1.3円~4円/kWhまで幅を持つ
  • 技術開発により低コスト化した再エネが大量に普及し再エネ買取優遇制度は縮小、売電単価は低下すると想定されるが、再エネの需要拡大により売上は増加
影響分析

売電単価や非化石証書価格は環境政策や技術の進展により変動する一方、再エネ需要自体は拡大し、当社の再生可能エネルギー事業拡大の機会となる。(発電量は、2050年度で2019年度比286%)

図

今後の戦略と対応
  • 再生可能エネルギー総発電量を2030年度までに533GWhとすべく既存の発電所の出力増強、海外展開も含む新規地熱・水力発電の調査・開発に注力する
  • 太陽光・風力発電の技術開発・普及状況、売電単価の動向を注視し、 発電原価の低減に取り組む

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水に関するマネジメント

当社グループにおける水使用量の大部分(約91%)は冷却水としての海水であり、淡水(工業用水や地下水等)の使用量は相対的に少ないものとなっています。しかし、淡水の不足は事業活動に影響をおよぼすおそれがあるため、当社グループの事業運営では、必要な水量および水質を確保することが不可欠です。また、台風や豪雨による洪水災害といった近年の頻発する水関連の問題とそれに伴う影響の大きさを考慮し、これらに対するリスク管理を行っています。
事業所では水リスクの低減策をそれぞれ進めており、水資源確保への対策については水の循環利用や水使用量の少ない設備の導入・更新等による節水に取り組み、洪水対策については建屋・ポンプ・電気設備等の嵩上げや排水ポンプの設置、増水を想定した訓練等に取り組んでいます。また、事業所からの排水水質異常や水質事故の防止のため、法規制を上回る独自の排水基準の設定による管理、水質異常時に検知できるセンサー・自動排水停止システムの導入等に取り組んでいます。

水リスク評価の取り組み状況

当社グループの製造事業所(一部、研究機関も含む)における水リスクの状況を把握するために、世界資源研究所(WRI)が開発した水リスク評価ツール「Aqueduct(アキダクト)」により、水資源確保に関するリスク、洪水の影響を受けるリスク等、水リスクに関わるそれぞれの項目について、事業所個別の評価を行っています。
さらに、より実態に即した水リスク評価とするため、各事業所における過去の水リスク顕在化の有無(所在地での洪水・渇水・取水水質悪化に関する発生履歴 等)や、事業活動に伴う水使用状況に関する情報(淡水・地下水の使用量、排水中に含まれる汚濁負荷物質の排出量)を加味して、Aqueductによる水リスクの評価結果を補完しています。
補完した水リスクの評価結果は、評価項目別にリスクスコアを表記したレーダーチャートによって事業所ごとの水リスクを可視化し、各事業所との共有を図っています。各事業所では、高いリスクと評価された項目を事業所におけるリスクとして登録し、水リスクの低減を含めた対応を立案・実施することにより、リスク管理を行っています。

事業所別の水リスクのレーダーチャート 表示例

図

水リスクの項目のうち、「水質リスク」については取水水質悪化による操業への影響や事業所排水による環境への影響、「規制・評判リスク」については取水・排水に対する規制の強さ・地域の評判の観点から、リスクを取水と排水に分けて評価しています。

三菱マテリアル株式会社