金属事業は、鉱山、製錬、資源循環の3つの事業分野に展開しています。鉱山部門では、海外の銅鉱山への投資を通じて、クリーンな銅精鉱を安定的に調達しています。製錬部門では、高効率で環境負荷の極めて低い「三菱連続製銅法」により、高品質の製品を国内外で製造・販売しているほか、製錬プロセスを活用し、E-Scrap等から有価金属を効率的に回収するシステムを確立し、資源循環に積極的に取り組んでいます。また、「三菱の金」ブランドのもと、個人向けに「マイ・ゴールドパートナー」等の貴金属地金商品・サービスを提供しています。資源循環部門では、家電、自動車などの廃製品のリサイクル処理を実施するとともに、製錬部門との連携を活かして資源循環の拡大に取り組んでいます。
高機能製品においては、市場ニーズや技術開発で共通性の高い銅加工と電子材料の2つの事業を一体的に運営し、ユニークな技術を活かしたさまざまな製品を、注力市場である次世代自動車、半導体製造・エレクトロニクス、産業機器・ロボット・インフラ向けに供給しています。
当社は、次世代自動車市場において重要な役割を果たすため、さまざまな製品を供給しています。大電流・高電圧、大容量通信への対応には、無酸素銅や高機能銅合金、リードフレーム等各種の銅加工品は欠かせません。また、省エネルギーを目的として主に自動車ガラスに使用されている熱線カット塗料、各種センサ等の車載用電子部品も供給しています。半導体製造・エレクトロニクス市場向けには、半導体製造装置向けシリコン加工品や半導体製造装置用シール製品等を供給しています。産業機器・ロボット・インフラ向けには、MRIや科学研究に利用される超電導線、高機能合金線、環境にやさしい鉛フリー快削黄銅エコブラス®やGloBrass®等を供給しています。
このように高機能製品における事業は、社会のメガトレンドに対応した高付加価値な製品の提供を通じ、新たなモビリティの普及をはじめ広く社会の発展に貢献しています。
加工事業では、金属部品の加工に不可欠な切削工具や超硬製品(建設工具、耐摩工具等)を供給しています。製造・販売拠点は、中国、アジア、米州、欧州とグローバルに展開しています。当社は、高い技術と信頼性により、お客さまのご要望に沿った付加価値の高い製品・サービスの提供を通じてさまざまな分野のものづくりを支えており、超硬切削工具では国内トップシェアを誇ります。また、超硬合金の主原料であるレアメタルのタングステンのリサイクルに積極的に取り組むなど、使用済み超硬工具の回収にも注力しています。
再生可能エネルギー事業では、地熱発電、水力発電、太陽光発電、バイオガス発電、風力発電等、再生可能エネルギーの安定供給を通じて脱炭素社会の構築に貢献しています。
関連事業では、多様な特色を持つグループ会社が幅広い事業を展開しています。例えば、鉱⼭跡地を整備し、観光坑道として活⽤しています。また、リサイクル会社では一般廃棄物の焼却後に残る塩素濃度が高い焼却飛灰を塩素が低濃度となるまで洗浄してセメント資源化する技術を開発しました。これにより、従来は実現困難だった焼却飛灰の完全リサイクルを実現しました。
セメント事業では、主原料となる石灰石の鉱山から、セメント工場、輸送・販売、生コンクリート工場、建設会社等、幅広い事業体制を構築しています。これにより、社会インフラの整備に貢献しているほか、国内外に製造・販売拠点を展開するなど、グローバルに活動しています。また、普通ポルトランドセメント等の汎用品に加え、低発熱型セメントや高強度コンクリート用セメント、無収縮グラウト材等、高品質の製品を供給しています。さらに、セメント工場では他産業で処理が困難な廃棄物を積極的に受け入れ、約1,450℃の高温焼成プロセスで無害化し、有効活用することで循環型社会の構築に貢献しています。
活動テーマ | 2022年度の活動実績 | 自己 評価 |
2023年度以降の活動目標・予定 |
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B |
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A |
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自己評価 A:目標達成 B:概ね目標達成 C:目標未達成
当社は総合素材メーカーとして、バリューチェーン全体で、多くの取引先との協働し共生を促進することで付加価値を向上させています。また、「製品の安定供給」や「製品の競争力強化」を目指し、グローバルな調達活動を積極的に展開しています。
安定した調達は操業の安定化と機会損失の減少につながるため、公平・公正な取引、腐敗防止、法令遵守、人権等に配慮し、取引先と社会や環境への負の影響を予防・軽減する協力関係の構築を目指しています。
私たちは、調達を行うにあたり、本取組みを原材料調達から素材・製品の開発、生産、流通、消費、廃棄そして再資源化を含むすべての事業活動の中で推進いたします。
(制定日 2021年12月1日)
当社では、グローバルなサプライチェーンにおけるCSR課題に対する組織的な対応力強化のため、「物流資材部門CSR調達ガイドライン」を取引先へ周知し、内容を相互に確認のうえ契約書を締結する等の取り組みを行っています。本ガイドラインは、銅精鉱以外の原材料・資機材を対象とし、公正な取引、人権尊重、法令遵守、調達倫理、労働衛生、環境保全、情報セキュリティ等、当社が守るべき責任に関する「調達基本方針」と、これら項目に加え、公正な事業活動、労働環境整備・労働時間、結社の自由、責任ある原料調達、製品の品質と安全性等に関してお取引先に遵守をお願いする「CSR調達基準」から構成されています。
当社では、取引先での取り組みの実効性を確保するため、2016年4月より実施しているサプライヤー採用審査およびサプライヤー評価を行い、必要に応じて現地監査も実施しています(2022年度においては現地監査を1社実施)。
新規に取引を開始する取引先に対しては、取引開始前に「サプライヤーセルフチェックシート」による自己評価を実施しています。このセルフチェックシートでは、従来の品質、価格、納期等の一般的な項目に加えて、児童労働・強制労働、不当な低賃金労働等の人権面や、環境への悪影響等といった調達に関わる社会的責任への取り組みについても確認を行います。物流資材部門において、セルフチェックシートの回答内容を基に12の審査項目に関する採点を行い、総合評点に応じた取り扱いを決定します。
また、既存の取引先に対しては、当社の規定に基づき、2年ごとにこの「サプライヤーセルフチェックシート」を用いた、自己評価を実施し、取り組みの進展を確認しています。また、主要原材料などの品目ごとに管理が必要な場合には「サプライヤー評価シート」を用いて、情報セキュリティや品質管理、納期管理、談合やカルテル・優越的地位の乱用などの腐敗防止等の計28の審査項目からなる総合的なパフォーマンス評価を実施し、パフォーマンス評価が悪かったサプライヤーを高リスクとして対応しています。
なお、2022年度の「サプライヤーセルフチェックシート」の回収数は新規取引先44社、既存取引先203社の計247社でした。このうち、新規取引先を対象としたサプライヤー審査を実施した件数は44社、既存の取引先を対象に定期評価を実施した件数は118社でした。審査および評価を実施した162社中、評価基準点を下回り、高リスクとなった取引先はありませんでした。
また、2023年度からは従来のサプライヤーセルフチェックシートを見直し、取引先におけるCSR、人権、労働・安全衛生、談合やカルテル・優越的地位の乱用等の腐敗防止に関する項目を含めた企業倫理、環境保全に対する方針、体制、取り組み、是正の仕組みに関する設問を追加しました。これにより、取引先の取り組み内容を把握し、サプライチェーン上でのESG・人権リスクを把握することに努めていきます。また、抽出されたリスクについては、取引先へのフィードバックを通じて改善を促進しています。
私たち三菱マテリアルは、総合素材メーカーとして、社会に必要不可欠な資源・素材・エネルギーを世界に送り出し、「人と社会と地球のために貢献する」ことを企業理念としております。
この企業理念実現に向け、企業としての義務と期待される役割を誠実に果たし、その活動をステークホルダーである皆様に開示・説明を行い、対話を通じて相互に理解を深めていくことが、当社が考えるCSR活動であります。
三菱マテリアルのCSR調達ガイドラインは、調達基本方針とCSR調達基準により構成されております。調達基本方針は当社が調達業務を遂行するにあたり、守るべき理念や基準を明確にしたものであり、CSR調達基準はサプライヤーの皆様及び皆様のサプライヤー様に遵守をお願いしたい事項を明確にしたものです。
当社は、CSR調達への取り組みは当社単独の取り組みで完結するものでは到底なく、サプライチェーン全体で取り組んでこそ、初めて実効あるものとなるという理解に基づき、このガイドラインを制定いたしました。
当社は調達を行うにあたり、本取り組みを原材料調達から素材・製品の開発、生産、流通、消費、廃棄そして再資源化を含むすべての事業活動の中で推進いたします。
このガイドラインの趣旨・精神に基づく公正な取引を皆様のサプライヤー様にも広く展開し、強靭で競争力のあるサプライチェーンの構築にともに努力してくださるよう願います。
以上
(改定日 2021年12月1日)
銅製品の原料である銅精鉱については、出資先である海外鉱山からの買鉱を中心とした調達を行っており、国内外の製錬所へ安定的に供給しています。当社は、直接的な鉱山経営を行わないノンオペレーターの立場ですが、グローバルな調達活動をする企業として持続可能な開発への責任を果たしていきたいと考えています。
当社は一定規模の権益を有する鉱山のアドバイザリー・コミッティーに特定の人員を参加させる等、先住民の方々や地域コミュニティーとの対話を重視しています。
また、買鉱先の鉱山会社に対しては、当社が出資する前にCSR投融資基準(当社出資がある場合)やCSR調達基準への遵守を要請するとともに、遵守状況の確認のために定期的にアンケート調査等を実施し、必要に応じて状況の把握や改善を申し入れています。さらに、環境保全や人権尊重をグローバルなサプライチェーンの管理における重要な考慮事項と位置付け、これらを事業プロセスに組み込んでいます。
事業により影響を受ける人々の基本的人権の保護、地域住民に関連する問題についてステークホルダーとの協議紛争地において人権侵害が懸念される武装集団などに直接的、間接的に関与していないこと
文化・自然遺産への影響の最小化、事業のあらゆる段階における生物多様性リスクの特定・評価、影響緩和策の立案・実施
先住民の社会・経済・環境・文化及び権利に対する理解と尊重、先住民に配慮した社会影響評価の実施、適切な補償措置
地域住民との紛争・訴訟の有無、事業計画に関する地域住民との協議・対話の実績
環境影響評価(EIA)実施と許認可、鉱山の開発・運営における環境負荷低減の具体的な方針
地域及び国レベルでの持続可能な経済発展
当社はテックリソーシーズ社(本社 カナダ)およびその子会社とともに、ペルーにおいてサフラナル銅鉱山プロジェクトに参画しています。
このプロジェクトでは、カンパニア ミネラサフラナル社(CMZ社)がオペレーションを担当しており、当社の実質的な出資比率は20%です。当社はペルー国内に子会社を設立のうえ、CMZ社と連携して現地の状況を常に把握しつつ、本プロジェクトの推進に取り組んでいます。
CMZ社は、地元の文化、価値観、伝統、歴史的遺産を尊重し、オープンで誠実な長期的パートナーシップを結ぶことを行動規範に掲げています。そのため本プロジェクト実施区域周辺の地域住民やステークホルダーとの公式な対話の場を設け、個別にブリーフィングの実施や問い合わせへの対応等も行っています。このような活動を通じて、地元の意見や要望を反映しながら、社会的な信頼の構築に努めています。
また、環境影響評価の許認可取得前には地域住民との対話を重ねてきたほか、将来の鉱山およびインフラ整備地域における環境・地域社会に関する基礎調査も実施してきました。
米国の「金融規制改革法」は、コンゴ民主共和国(DRC)およびその隣接国の鉱物が、人権侵害や暴力行為を行う反政府軍の武装資金源となることを防ぐため、米国上場企業に対し、タンタル、錫、タングステン、金の4鉱物(3TG)を「紛争鉱物」と定義し、原産国の調査と調査結果の開示を義務付けています。近年、EUを中心に「紛争鉱物」の範囲が拡大し、より広く「責任ある鉱物調達」という観点からコバルトや銀についても検証の対象となっています。この動向に連動して、OECD(経済協力開発機構)やSEC(米国証券取引委員会)、RMI※1やLBMA(ロンドン貴金属地金市場協会※2)等が、紛争鉱物問題(責任ある鉱物調達管理)に関するガイダンス等を策定しています。
当社は、金、銀、および錫を製錬する責任ある事業者として、これらの世界的な要請に対応するための取り組みを進めており、関連方針を策定し公開しています。
また、銅、鉛のサプライチェーンのリスクにも配慮し、これらの金属の生産者や取引業者に対して、効率的なデューディリジェンス基準に基づいた調査を行っています。
当社の「責任ある鉱物調達方針」に反する行為があった場合、「責任ある鉱物調達ホットライン」にご連絡ください。
当社金属事業カンパニーでは、2011年6月からEITI※1(採取産業透明性イニシアチブ)が推進する「鉱物資源に関わる資金の流れの透明性確保に向けた活動」に支援を表明してきました。 また、紛争鉱物問題に関しても、2012年から準備を進め、2013年8月以来、LBMA(ロンドン貴金属地金市場協会)※2から、「金」に関する紛争鉱物不使用の認証を継続取得し、「銀」について新たに運用を開始しています。さらに、 2014年2月から「錫」に関するRMI※3のRMAP※4認証を毎年取得しています。
制定:2013年6月19日
最終改訂(改訂7版):2022年12月1日
金属事業カンパニーでは、金、銀及び錫の地金を製造しています。紛争地域等の高リスク地域における、人権侵害、テロリストへの資金供与、マネーロンダリング、不正取引などに係る原料調達は行っておりません。また、原料調達に関して環境及び持続可能性に係る責任に取り組むことの重要性を認識しております。これらの徹底を図るため、金、銀についてはLBMA(London Bullion Market Association)のガイダンス、錫についてはRMI (Responsible Mineral Initiative)のRMAP (Responsible Minerals Assurance Process) に沿った管理システムを構築・運用し、定期的に第三者機関による監査を受けることとしています。
金、銀及び錫に適用する当カンパニーの責任ある鉱物調達方針は以下のとおりです。
以上
当社金属事業カンパニーで製造する銅地金および鉛地金はLME(ロンドン金属取引所)においてブランド登録されています。今般、LMEが上場ブランドに対して責任ある調達の要件を導入する方針を打ち出したことを受け、金属事業カンパニーでも下記の「責任ある鉱物調達方針(銅、鉛)」を規定し、LMEの調達要件を満たした責任ある鉱物調達を実践しています。
制定:2023年9月1日
金属事業カンパニー製錬事業部直島製錬所、小名浜製錬株式会社小名浜製錬所、細倉金属鉱業株式会社では、銅、鉛の地金を生産しています。これらの地金の原料調達について、London Metal Exchange の Responsible Sourcing 及びCopper Mark の Joint Due Diligence に沿った管理システムを構築・運用し、リスク評価についての独立した第三者評価を受けることとします。
以下に銅地金、鉛地金に適用する当カンパニーの責任ある鉱物調達方針を示し、実践してまいります。
以上
当社のタングステン製錬を担当するグループ会社の日本新金属(株)は、2021年6月に従来の「紛争鉱物マネジメント方針」を拡張し、より幅広い地域と鉱物に対象範囲を拡げた「責任ある鉱物調達マネジメント方針」として改訂しました。日本国内でタングステン製錬を行う企業として、製錬工程に投入される原料が「責任ある鉱物調達」ガイドラインに沿った原料であることを確保するとともに、社外のタングステン製錬企業から購入する原料についても、同様の管理を進めています。さらに、2021年11月には、「CFS認証」から発展した「責任ある鉱物保証プロセス(RMAP)」の認証を取得しました。
日本新金属(株)「責任ある鉱物調達マネジメント方針」
日本新金属(株)RMAP認証
当社は、国内外のグループ会社において、品質リスクを低減するためのリスクマネジメント活動を推進し、品質問題の未然防止に取り組んでいます。これにより、品質リスクの顕在化を防ぎ、顧客への安定した品質の提供を目指しています。
また、品質よりも納期やコストを優先することがないよう、業務遂行における判断の優先順位をSCQDE※の順に定め、従業員に繰り返し周知・教育し、一貫した判断がなされる環境を醸成しています。この考え方は製品開発においても適用されており、課題解決や潜在リスクへの対応における基本原則としています。 さらに、フロントローディングシステムガイドラインを定め、設計・開発部門、製造部門、品質保証部門、研究部門、営業部門が設計から量産までの各段階で、考慮すべきリスクや問題点を抽出し、改善や対策を審議、専門家の審査や顧客の評価を経ることで新たな事業の実行を確実なものにしています。
当社は、メーカーとしてお客さまに安全で高品質な製品をお届けするため、法令・規制の遵守に加え、予防的アプローチに基づき、製品の品質や安全性の確保に取り組んでいます。また、製品に含まれる有害化学物質の管理に関しては、「製品有害化学物質管理規定」を策定し、グループ会社を含めて有害物質を含まない製品の提供を徹底しているほか、必要に応じて製品情報の開示も実施しています。
当社は、硫酸などの輸送上安全配慮を必要とする製品の輸送に際しては、以下の対策を実施して輸送上の安全確保に努めています。
①ほかの物質との混載を避ける ②充填・荷下ろし時に保護具を着用する、 ③容器からの漏えい・飛散防止のための措置を講じる、 ④災害発生時の処置等を明記した安全データシート(SDS)を運転手に提供する等。
自社製品の安全に関する情報を提供することは、サプライチェーンにおける製品安全を確保するうえで非常に重要です。当社では、自社製品に対して安全データシート(SDS)を添付し、化学物質情報の開示・伝達を確実に実施しています。
当社では、「製品有害化学物質管理規定」を定めて、製品に含まれる化学物質の管理強化と法令・規制の遵守を進めています。国内では、化審法※1に基づく化学物質の登録を行い、維持管理を行っています。国外では、EU域内に適用されるREACH規則※2に基づき、2017年9月までに化学物質の登録を完了し、現在は維持管理を行っています。なお、英国のEU離脱に伴い、英国でも新たにREACH規則(通称UKーREACH)が施行されており、当社は、UKーREACHに対応するために必要な準備を進めています。また、その他各国の化学物質関連法規制についても必要に応じて情報を収集し対応しています。
グループ会社に対しては、品質連絡会・品質ミーティングを通じ最新の情報を発信し、これらの法規制に対応するよう指導しています。
当社では研究開発の過程で、テーマ調査、研究開発・試作、量産試作、事業化という4つの段階でレビューを行っています。これにより、製品やプロセスの安全性を常に考慮しながら、有害化学物質等の使用有無や顧客要求事項への適合性および各種法令の遵守などを確認し、精査しています。研究開発の初期段階からこれらの要素について繰り返し確認を行っています。
当社グループでは 、2017年に発生した品質問題が風化し再び同じ問題が発生することがないよう、毎年11月1日を当社グループ全体の「品質振り返りの日」に制定しています。2022年度は、品質問題に対する社長メッセージや教訓映像を視聴し品質問題を振り返りました。各拠点では、お客さまに提供している製品・サービスの品質に問題がないかを再確認する機会とし、クレーム等の再発防止の有効性の確認や規格・規定類の確認および見直しなどの各種取り組みを実施しました。
当社グループは、品質管理に関するガバナンス体制を強化するために、「品質基本規定」を運用しています。同規定では、お客さまに満足していただける一級品の製品を提供することを目指す「グループ品質方針」を策定するとともに、さらにこれを補完する「品質管理に関するガイドライン」を制定し、運用しています。当社グループのすべての組織は、製品およびサービスの品質向上に関わる過程で、設計・開発の段階から製造・出荷・販売に至るまでの品質保証体制を確立し、その維持に取り組んでいます。
当社グループは、国内外の各拠点で多種多様な製品を取り扱っており、品質管理に関わる最新情報の共有が重要です。そのため、当社グループの品質管理に携わる代表者が参加する品質担当者会議を定期的に開催しています。この会議では、安全環境品質部から当社の品質に関するさまざまな最新情報を発信し共有するとともに、各拠点の改善事例の共有やテーマに沿った集団討議を行い、参加した代表者の理解を深め、それを各拠点で共有することでさらなる改善を促すことを目的としています。
また、安全環境品質部および各カンパニー等の品質担当者から構成される品質連絡会を設置し、ガバナンス体制の強化に注力しています。品質連絡会では、グループ会社を含む各カンパニー等の品質活動の状況報告などを行い、必要な情報を共有しています。
さらに当社では、品質情報の共有化を目的とした品質ミーティングを必要に応じ開催しています。品質ミーティングでは、各拠点と個別に品質管理状況を確認し、意見交換を行うなど、詳細な支援を行っています。また、監査部が主導するテーマ監査の一環として、品質監査を実施しています。品質監査の目的は、品質に関する不正行為がないこと、効果的な品質活動の実施を客観的証拠に基づき確認することであり、品質に関する課題や改善点を抽出し、監査対象拠点に対して継続的改善の機会の提供を目指しています。
当社では、 品質問題発生当時、グループ内において危機感の共有が不十分であったこと、当事者意識の欠如が見られたことへの反省を踏まえ、品質意識の改革とその継続を目的に、若手従業員、中堅従業員、管理職の各階層に対して品質教育を実施しています。 ISO9001に基づく品質マネジメントシステム(QMS)は、品質管理・品質保証の基礎となります。ISO9001 の内部監査員養成を目的とした新任者向け内部監査員講習を定期的に開催しており、2022年度は12回の講習会に計133名が参加しました。さらに、内部監査の経験がある従業員の能力維持と向上を目的とした講習会を6回行い、計23名が参加しました。
加工事業カンパニーは、欧米、アジアに計10の製造拠点を有し、国内事業所と連携して高品質な製品の製造に取り組んでいます。海外での現地製造品の拡大に対応するため、設備保全、生産技術、検査基準等について、国内事業所からの技術指導を継続的に実施しています。多年にわたる取り組みにより、現在では、地元従業員が主導する形で改善ミーティングや品質管理の見直しを行っており、技術習得への意欲が品質向上の原動力になっています。さらなる品質向上を実現するために、継続的な品質教育の実施による品質意識向上や品質文書の改善等の活動に取り組んでいます。
また、高機能製品カンパニーは、電子デバイス事業がいち早く東南アジアに進出し、海外への生産移管を進め、現在では、東南アジアに5つの製造拠点(子会社および協力会社を含む)を持ち、国内のセラミックス工場と緊密に連携した生産体制を築いています。銅加工事業は、欧米とアジアに合計12の製造拠点を有し、国内事業所および本社との連携を強化し、品質管理レベルの維持・向上に取り組んでいます。特に、品質クレーム低減やガバナンスの維持のために情報共有を促進し、海外駐在員および現地スタッフの意識向上とスキルアップを目指して、品質責任者会議、小集団活動発表会、カンパニー主導の品質監査、タイムリーなWEB会議等、多岐にわたる活動を行っています。
当社グループは、品質管理に係る再発防止策の実行・強化に取り組んできた結果、品質意識および品質管理レベルが向上し、対策が確実に浸透しました。今後も品質問題の再発を防ぐために、一連の品質問題に対する再発防止策をISO9001等の品質マネジメントシステムに組み込み、継続的に実施していきます。
当社は、過去の品質問題を再発させないため、不適合品を社外に流出させない「守りの品質」の体制づくりに取り組んできました。再発防止策の確実な実施により、品質意識は大幅に向上し、不適合品の外部流出を防ぐ品質管理体制が整備されました。
現在は「攻めの品質」として、不適合品の発生を防ぐための設計・設備・工程の実現にも取り組んでいます。各カンパニーおよび拠点では品質目標を設定し、その達成に向けた各種改善活動を推進しています。
品質が当社グループのブランド資産になるよう、品質教育や品質改善活動によって継続的なレベルアップを図り、お客さまが満足する製品を提供し続けていきます。