三菱マテリアル

Pursuit of Value Creation 価値創造の追求

新規事業創出プロセスの構築と実行

研究開発の基本方針

世の中の変化を先取りした新製品・新技術の開発

当社グループの研究開発の基本方針は、「未来を見据えた素材・材料開発」、「コーポレート/ディビジョン・ラボが一体となり、事業競争力強化に向けた新製品・新技術の創出」および「産・官・学連携(含むCVC) によるR&D成果の早期実現」です。この基本方針のもと、「循環をデザインするサスティナブルなマテリアル」を社会に提供していくことを目指しています。
研究開発戦略では、素材の動脈と静脈の両方の機能強化、GHG削減に資する新製品やプロセス革新を図り、「新製品・新技術・新事業創出を通して、持続的な企業価値向上を実現」することを掲げています。資源循環の社会的要請が高まる中で当社が進むべき方向性を意識して、新たな資源循環プロセス技術を獲得するためのテーマを創出します。並行して、メガトレンドや市場変化を的確に捉え、成長分野(モビリティ、半導体関連)や当社材料技術を活かしながら新領域(ライフヘルスケア等)に注力します。また、新規テーマにはGHGゼロの思想を入れて研究開発を行っていきます。さらに、長期的な視点で、夢のある将来技術にも果敢にチャレンジしていきます。当社グループは、技術、人材、情熱を結集し、顧客視点とスピードをキーワードにイノベーションを起こしていきます。コア技術をベースとした技術開発力とものづくり力を融合することで価値を具現化し、新製品、新サービス、新事業の創出および知的財産の整備に取り組みます。

2023年度以降の強化ポイント

2023年度は、中期経営戦略の初年度として、ものづくり力の別格化を実現し、生産プロセスの高度化、スマートファクトリー化を推進し、新事業の創出促進に取り組みました。また、メガトレンドを捉えた資源循環、脱炭素化、半導体関連、モビリティ分野を中心とする研究開発の推進を継続しています。
組織面では、アイデア創出、研究開発から量産化・事業化までを一気通貫で実現をするため、ものづくり(生産技術)、開発、マーケティング、新規事業に関する部門を統合した、ものづくり・R&D戦略部を新設しています。同部内のイノベーションセンターでは、研究開発・ものづくりの課題や新規事業のテーマごとに、人材を効率的に活用する体制を整え、新製品・新事業の創出や課題解決に向けた開発や技術獲得を進めています。また、インキュベーションセンターでは、イノベーションセンターから生み出される事業やカンパニー単独では拡大が難しいと判断される事業等を育成・強化しています。さらに、社内外と連携し、事業基盤強化および新規事業創出の推進および会社横断的な専門人材の育成・確保と継続的なレベル向上を目指すため、2024年度より新規事業室、知的財産室、開発企画室、ものづくり・生産技術企画室を同部内に設置しました。
これらの取り組みにより、現在の課題である各戦略間の連携や柔軟な経営資源の配置、総合的なプロジェクトマネージャーや量産化・事業化の専門人材育成を強化していきます。

推進体制

推進体制

MMCイノベーションファンド

当社は2019年3月に、JMTCキャピタル合同会社と共同で、材料技術を有するベンチャー企業を投資対象とするコーポレート・ベンチャーファンド「MMCイノベーション投資事業有限責任組合」を設立しました。
次世代電池や金属加工、IoT・AI、ライフヘルスケアに関連する材料技術、低炭素や都市鉱山に関連する材料やプロセス技術を重点対象として、当社とシナジーのある技術系スタートアップ企業を支援するとともに協業を加速します。

時期 投資先 投資先の技術・製品 当社の狙い
2019年10月 エレファンテック(株) 金属ナノインクのインクジェット印刷と無電解銅めっきを用いた、アディティブ・マニュファクチュアリングによる電子回路基板の製造技術を保有している。 同社を評価パートナーとして「銅ナノインク」の開発を開始、回路基板用に銅の新製品を開拓し材料供給の機会を狙う。
2020年5月 (株)エネコートテクノロジーズ 従来のシリコン系の太陽電池と比べて、高い発電効率と軽量性、柔軟性を特徴とするペロブスカイト太陽電池の開発を行っている。 ペロブスカイト太陽電池の性能向上や鉛フリー化に必要な周辺材料等の開発に関して同社と協業し、ペロブスカイト太陽電池の普及時の材料供給の機会を狙う。
2020年6月 CONNEXX SYSTEMS(株) リチウムイオン電池(LIB)と鉛蓄電池を組み合わせた新規の蓄電池や高出力LIB、次世代電池の開発・生産技術を有している。 使用済み車載LIBをリユース・リサイクルする技術開発を進めており、回収された使用済み車載LIBの定置用蓄電池等へのリユースを同社と検討することで、リユース事業を推進する。
2020年9月 Nature Architects(株) 部品等の軽量化のために必要な部分のみに強度を持たせたり、硬い部材に振動を吸収する機能を付与したりするなどの独自の構造体設計技術に強みがある。 同社と協業し、当社が持つ非鉄金属をはじめとする材料特性に関する知見と、同社の設計技術を掛け合わせ、当社の材料を活かした積層造形で、新たな付加価値を持った独自の製品の開発に取り組んでいく。
2021年7月 (株)イムノセンス 特許技術「GLEIA(Gold Linked Electrochemical Immuno Assay)」によって、高感度と小型化を両立した、独自のPOCT(Point of Care Testing:医療現場でのリアルタイム検査)向け免疫センサーを開発・提供する。 同社との協業を通じ、当社が持つ非鉄金属をはじめとする素材に関する知見と、同社の持つライフヘルスケア関連の技術や知見とのシナジーを見出し、ライフヘルスケア領域に応用することを目指す。
2024年9月 Visban(株) 大容量データの高速伝送や複数のデバイスの同時接続により混雑の少ない通信環境の提供を可能とするミリ波ネットワークデバイスの開発を行っている。 同社と協業し、当社の強みとする微細回路形成に必要な素材、異種材料接合技術、およびその評価技術を適用することで、5G/6G通信の普及拡大に大きく貢献することを目指す。
2024年11月 (株)illuminus 独自技術である「レーザー誘起還元法」を用いて、金属ナノ粒子や合金ナノ粒子を開発・製造する。 同社と協業し、ナノ粒子合成プロセスに必要な素材の提供をはじめ環境負荷の少ない新規金属・合金ナノ粒子の製造プロセスの確立を目指す。

知的財産部門の取り組み

経営・事業・開発戦略および新規事業戦略に沿った知的財産活動として「戦略対話」を進めています。戦略対話では、開発方針の検討段階から知的財産情報の戦略的解析を踏まえてカンパニー等事業部門および新規事業部門と対話し、事業展開に必要となる知的財産を戦略的に形成します。戦略対話をはじめとする各種の知的財産活動を通じて、新しい価値創造の取り組みを支援します。

図

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2023年度の主な取り組み

固体電解質薄膜トランジスタを用いたバイオセンサの製品化に着手
~短時間で複数の核酸・病原体を同時に検出~

当社と北陸先端科学技術大学院大学(石川県能美市)バイオ機能医工学研究領域の高村禅教授、廣瀬大亮助教は共同で、新規の固体電解質薄膜トランジスタを用いたバイオセンサを開発し、実用化に向けた製品開発に着手しました。
医療の分野における遺伝子検査では、一般的にPCR(Polymerase Chain Reaction)法など核酸を増幅して検査する方法が用いられていますが、検査機器が高価であり、また、大型のため用途が限定されています。 当社では、従来より金属や酸化物など様々な材料に薄膜を形成するための研究開発を行っており、湿式成膜による薄膜材料開発に関する高い技術力を有しています。このたびの共同開発では、その技術を応用し、検知部に独自に開発した固体電解質薄膜トランジスタを用いた新たなバイオセンサを開発しました(模式図参照)。
本バイオセンサでは、微小な電荷による電圧変化を検出することで、PCRなどの増幅法に比べて短時間で検査結果を得ることができます。また、微細加工技術を利用してセンサ素子を並列に複数個配列することができるため、複数の核酸・病原体の同時検出が可能となります。さらに、固体電解質薄膜トランジスタ自体が小さいため、バイオセンサの小型化が可能であり、今後も用途の拡大が見込めます。
今後は測定可能な核酸の種類を拡張するとともに、複数の種類を含む病原体を同時に検出可能なセンサの製品化に取り組み、実用化に向けた製品開発を推進します。
当社グループは、「人と社会と地球のために」という企業理念のもと、これからも非鉄金属素材およびライフヘルスケア分野に付加価値の高い製品の開発・提供を通じて、豊かな社会の構築に貢献していきます。

新開発のバイオセンサ

    
    
銅合金の特性予測モデルを構築
~三菱マテリアルのマグネシウム銅合金「MSP®シリーズ」優位性を裏付け~

当社(以下、「MMC」)と国立研究開発法人物質・材料研究機構(以下、「NIMS」)は、86元素を網羅する銅合金の特性予測モデルを新たに構築しました。本モデルを用いた両者の共同研究の結果、銅に添加する元素としてマグネシウム(Mg)が最も総合的に優れていることを明らかにしました。
MMCとNIMSは、NIMS-三菱マテリアル情報統合型材料開発センターを2020年に設立し、情報統合型材料開発システムの研究に取り組んできました。このたびの共同研究は、MMCの銅合金設計技術およびシミュレーション技術と、NIMSが得意とするデータサイエンスを利用した材料開発手法である「データ駆動手法」を融合させ、実現したものです。
安定性、コスト、安全性の観点でリアルでの実験が困難な銅合金に対して、シミュレーション技術とデータ駆動手法を組み合わせ、銅合金特性の予測精度を高めた特性予測モデルを構築し、銅に加えるさまざまな添加元素を比較しました。その結果、銅に加える添加元素としてマグネシウム(Mg)が最も総合的に優れていることを明らかにしました。これによりMMCのCu-Mg系固溶強化型合金「MSP®シリーズ」の特性・品質の高さを示すことができました。
当社とNIMSは、今後も組織間連携を深め、得られた成果の普及と活用の促進を通じ、日本の素材産業全体の国際競争力の強化に貢献していきます。

銅固溶合金の機械特性と電気特性の関係

  • ※ 固溶強化:母相(溶媒原子)の中に別の原子(溶質原子)を溶け込ませること(固溶)により 材料を強化する手法。
    
三菱マテリアル株式会社

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