Maintenance and Improvement of Governance ガバナンスの維持向上

グループガバナンスによる内部統制の拡充

リスクマネジメント

リスクマネジメント活動

当社グループをとりまくさまざまなリスクに適切に対応し、被害・損害を極小化することにより事業を安定的に運営するため、リスク感性の向上に努めています。2023年度より、ISO31000に準拠した、より実効性と確実性を高めた新たなリスクマネジメントシステムを構築し、国内外の全グループ事業拠点においてリスク低減活動を展開しています。

基本的な考え方

当社グループのリスクマネジメント活動は、リスクを顕在化させないための未然防止活動であり、「リスク発現時の被害・損害の極小化による企業価値の向上」を目的としています。この目的を達成するため、3つの基本方針を定め、活動を展開しています。

リスクマネジメントの基本方針

  1. リスク洗出し、特定:組織の内部/外部環境を把握し、網羅的にリスクを感知
  2. リスク対応:リスク評価に応じた優先順位付けと対応
  3. 活動全般:継続的な実施により、組織的に管理レベルを改善

推進体制

当社グループでは、本社管理部門においてグループ全体で共通性や優先度が高い、事業運営に深刻な影響を及ぼす重大リスクを特定・評価しています。一方、各事業分野における固有の重大リスクは本社事業部門が特定をしています。
それぞれの重大リスクの特定・評価、対策の実施状況は、当社のSCQ推進本部、戦略経営会議で協議し、モニタリングしています。これらの会議体では、CGO(最高ガバナンス責任者)が実効責任を担い、監査委員会からも独立して運営されています。また、取締役会では、そのプロセスの実効性について検証、見直しを実施し、ESGリスクを含めたリスクマネジメントを総合的に監督しています。
教育面では、リスクマネジメントの概要から具体的な進め方までを網羅する社内研修を実施し、リスク感性の向上に努めています。

リスクマネジメント推進体制

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重大リスクの階層とリスクマネジメントプロセス

当社グループでは、リスクを以下の階層に分け、網羅的にリスクをマネジメントしています。

  • グループ全体で共通性や優先度が高いリスク(本社管理部門)
  • 各事業分野における固有のリスク(本社事業部門)
  • 事業拠点固有のリスク(事業拠点)

図

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リスク評価

すべてのリスクは、グループ内で統一された定量/定性的な評価基準により、影響度/発生可能性の5段階で評価されます。
さらにそのリスクレベル(A,B,C,D)に応じて、リスク対応の優先順位を決定しています。

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事業等のリスク

経営者が当社グループの業績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは下表のとおりです。

リスク名称 発生可能性 影響度
地政学、国際情勢、海外経済情勢
市場動向
原材料・ユーティリティ価格の変動
調達品
気候変動
自然災害・異常気象
公害および環境法令違反の発生
感染症
情報セキュリティ
人権
財務

以下に「事業等のリスク」の抜粋を記載します。

地政学、国際情勢、海外経済情勢(発生可能性:高、影響度:大)

当社グループは、海外31の国・地域に生産および販売拠点等を有し、海外事業は当社グループの事業成長の重要な基盤と位置付けています。

ウクライナ情勢やそれに伴う諸外国によるロシアへの経済制裁やウクライナへの軍事支援、米国・中国をはじめとする二国間関係等により、国際関係は不安定な状況が続き、先行きは依然として不透明になっています。当社グループが進出する国、地域等において、政情不安、国家間の紛争や一方的な侵攻、政変等の地政学リスクが顕在化した場合、当社グループの事業活動に支障が生じ、業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また上記リスクのほか、グローバルな事業展開に関するリスクとして、各国・地域の経済情勢、予期しない政策や規制、取引先の事業戦略や商品展開の変更等が想定され、当社グループの事業活動に支障が生じ、業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があり、これらのリスクは常に潜在的に存在していると判断しています。

これらのリスクに対しては、従来のリスク低減回避策やBCP等をさらに徹底していくとともに、常に情勢を注視・モニタリングし、事業戦略、海外投資等の見直しを行います。また、現地拠点からの情報共有や各事業間の連携により、これら情勢の変化に適切に対応しています。海外における法的規制等個別のカントリーリスクに関する情報収集とグループ内の共有、周知に努めています。

特に、金属事業においては、銅生産国における国家や地方政府による資源事業への介入、銅精鉱の世界的な需給バランスの変動、銅精鉱の品位低下等、当社グループの管理が及ばない事象による影響を受けるリスクがあります。これらに対し、持続可能な原料ポートフォリオの形成の一環として、銅精鉱買鉱先の国・地域の分散、効果的な優良鉱山プロジェクトへの投資を推進しつつ、一方でE-Scrap(各種電子機器類の廃基板)をはじめとするリサイクル原料を積極的に利用することで、原料を安定的に確保していきます。

原材料・ユーティリティ価格の変動(発生可能性:高、影響度:大)

1)原材料価格
非鉄金属原材料、石炭等の調達価格は、国際商品相場、為替相場および海上運賃等の変動の影響を受けます。これら原材料価格等の高騰等により調達価格が上昇した場合、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。国際商品相場、および為替相場等の大きな変動は過去にも発生し、今後も数年に一度程度の頻度で発生する可能性があると想定しています。

このため、金属事業における銅精鉱に関しては、原材料調達ルートの複線化や安定的な調達先の確保や海外鉱山への投資等、加工事業のタングステン原料等の非鉄金属原材料に関しては、調達先の拡大やリサイクル原料の使用比率の向上等に取り組む等、原材料価格への影響の最小化に努めます。

2)ユーティリティ価格
原油、石炭、天然ガスの調達コストの大幅な上昇によりエネルギー価格も高騰し、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼしています。これら価格のさらなる上昇や値上げ等が生じた場合、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。エネルギー価格の上昇リスクが顕在化している現在の状況からも、省エネ設備の導入推進、あるいは自家消費型太陽光発電システムの導入を進めることで購入電力量の削減を図ります。

気候変動(発生可能性:高、影響度:大)

気候変動に対する政策および法規制が強化され炭素価格制度(排出権取引制度や炭素税)が導入、強化された場合など、温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)排出量に応じたコストが発生することにより当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、脱炭素社会への移行に伴い、当社の従来からの製品市場において縮小が見込まれる分野も存在しており、新たな市場拡大分野への対応が遅れた場合、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。気候変動に関しては、全世界的にカーボンニュートラルの動きが高まっており、わが国においても2050年のカーボンニュートラルへの取り組みが宣言される中、近い将来に想定される規制強化に向けた迅速な対応が必要であると判断しています。

このため、2030年度に向けたGHG削減目標を見直し、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの使用を拡大することにより、当社グループの事業活動により排出されるGHGの削減に取り組んでいます。また、当社グループ製品の市場競争力を向上するため、製造プロセスの改善や環境配慮型製品の開発、CO2回収・有効利用・貯留(CCUS:Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)など環境負荷を低減する技術開発を推進しています。

一方、気候変動に関する政策等の強化により、省エネ・GHG排出削減に貢献する技術や製品・サービスの需要が拡大することが予想され、ビジネス機会が増大すると想定しています。当社グループでは、脱炭素化に貢献する素材・製品・技術の開発、地熱発電等の再生可能エネルギーの開発・利用促進、CO2回収・利用に関する実証試験・技術開発の推進、保有する山林の保全活動等に取り組んでいます。

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危機管理活動

基本的な考え方

当社グループは、自然災害、事故、テロおよびパンデミック等の危機事態に迅速かつ的確に対応するため、危機管理体制の強化に努めています。当社グループ全体に適用される危機管理関連規定を運用するとともに、大規模地震およびパンデミック事象について、事業継続計画(Business Continuity Plan)を国内外の全連結子会社で策定し、定期的に内容を更新しています。大規模地震およびパンデミックが発生した場合、重要業務がいち早く復旧できるよう、必要な人的・物的資源の洗い出しを行い、備蓄品の整備、重要製品の代替供給、重要設備のメンテナンス・修理の計画等について盛り込んでいます(シナリオ想定は以下のとおり)。

<大規模地震>

  • 各建屋使用可能、設備被害軽微
  • 電力、ネットワーク(基幹系システム、インターネット、電話等)使用不可(3日間)
  • 上下水道の停止(飲料水、トイレの提供は不十分)
  • 交通機関停止による欠勤者多数

<パンデミック>

  • 緊急事態宣言の発令や多数の感染者により出社抑制(1ヵ月程度)

これにより、危機事態が発生した場合でも、事業を迅速に復旧し継続することで、お客さまへの影響を最小限に抑えるよう努めています。
また、社外コンサルタント会社等から世界各地の最新の危機管理に関する情報や専門的な助言を随時受けており、海外出張者や現地駐在員は、有事の際には行動判断の助言、現地での安全確保サービスおよび医療サービスを利用できる体制を整えています。さらに、各危機事態における対応体制、役割と責任を明確にし、時系列に対応事項等を整理したフレームワークを整備しており、広く危機事態に対応できる体制としています。

危機管理システム

当社グループでは、自然災害等の危機事態が発生した際に、いち早く従業員の安否や事業拠点の被害状況を把握し、グループ内で共有するために、危機管理システムを国内外で運用しています。
これにより、迅速かつ適切な初動対応が可能になり、また当社グループのネットワークを活かした被災地域の近隣拠点からの支援等も可能となります。

危機管理システム

危機管理システム

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情報セキュリティ

当社グループは、情報セキュリティを経営上の課題のひとつに位置付けており、個人情報の取り扱いを含め、情報管理の徹底を図ることで安全な事業運営を目指します。

基本的な考え方

当社グループは、情報セキュリティを経営課題のひとつに位置付けており、特に顧客および取引先の個人情報については最も重要な情報資産のひとつと認識して、漏えいや滅失、破損リスクの低減に取り組んでいます。

管理体制

当社グループの情報セキュリティポリシーを守るため、「グループ情報セキュリティマネジメント規定」「情報セキュリティ対策基準」「秘密情報管理規定」、そして各種の実施手順を定め、その遵守を義務付けています。

グループ情報セキュリティマネジメント規定:

当社グループが所有または管理する情報資産を盗難、漏えい、改ざん、破壊行為等から防ぎ、企業の損失を最小化することを目的として、当社グループにおける情報セキュリティについてマネジメントシステムの構築および運用に関する基本的事項を定めたもの。

情報セキュリティ対策基準:

当社グループが電磁的情報資産に対して取るべき情報セキュリティ対策の基準を定めたもの。

秘密情報管理規定:

情報資産全般の機密性を維持するための管理方法に関する基本指標を定めるとともに、個人情報の取り扱いに関する基本的事項を定めたもの。

情報セキュリティポリシーと文書の体系図

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また、情報セキュリティポリシーの確立、導入、運用、監視、見直し、維持および改善を実施する「情報セキュリティ部会」を設置し、その実効性を確保するため、当社およびグループ各社に情報セキュリティ統括責任者を置き、運用・監視にあたっています。

情報セキュリティ運用管理体制

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情報セキュリティ遵守に向けたさまざまな取り組み

情報セキュリティ活動においては、大規模災害時等の事業継続も視野に入れて情報インフラの強化拡充に努めるとともに、情報システムに関するさまざまな技術的対策の強化並びにマネジメントシステムの導入と運用を柱としています。技術的対策では、既知の脆弱性を狙った攻撃に対して被害に遭わないための防御策を充実させる一方、標的型攻撃等の新たな脅威に対しては、「多層防御の拡充」「被害の早期検知」といったリスク低減策に取り組んでいます。近年、感染被害が増加しているランサムウェア(身代金要求型ウイルス)をはじめとしたウイルスへの対策については、当社および全グループ会社へ、脆弱性に対する修正プログラムやアップデートを強制的に適用させるシステムを海外グループ会社まで導入しています。
マネジメント面では、パフォーマンス評価、従業員教育といったPDCAサイクルを反復実施することで、セキュリティレベルの維持向上に努めています。
2023年度の施策として、2022年度中に監視対象拠点のグローバル展開を終えたセキュリティ・オペレーション・センタ(SOC)の安定運用と監視対象領域の拡大を引き続き取り進めます。また、セキュリティインシデント対策チーム(CSIRT)の活動の定着化を図り、情報セキュリティ教育、訓練によるセキュリティ意識の向上とレベルの統一を図ります。
さらに、日本国内法やGDPRのみならず各国の個人情報保護法への対応によるコンプライアンス遵守に加え、デジタル化、スマートファクトリー化が進むOT(Operational Technology)領域の新たなセキュリティ施策やサプライチェーンリスクマネジメントの強化も実施していく計画です。 深刻化するセキュリティの脅威に対して、今後とも、さまざまな技術的対策を、総合的・効率的かつ適切なレベルで検討・実施していきます。

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感染症リスク対応と事業継続

基本的な方針

当社グループは、新型コロナウイルス感染症の影響下において、従業員の感染防止と事業拠点や地域における感染拡大防止を最優先に、重要な事業を停止させることのないよう、以下のグループ共通方針のもと、各種対策に取り組んできました。

  1. 従業員の健康と職場の安全を最優先に、感染予防・拡大防止に万全を期す
  2. 国や行政の要請・指示に従い事業活動を行うとともに、従業員個々人が私生活においても自覚を持って行動する
  3. 社会基盤を支える製品の生産・供給やリサイクル事業が途絶えることがないよう事業継続させ、顧客・社会からの要請に応える
  4. コロナ禍への取り組みを契機にワークスタイルの見直しにつなげ、生産性を向上させる

体制

当社グループは、2020年1月、本社に新型コロナウイルス対策本部を設置し、グループの統一的な対応を指揮してきました。対策本部は、世界各地の新型コロナウイルス感染症の流行状況に応じたグループ対応方針と予防対策のガイドライン等を策定するとともに、従業員の健康状態や国・地域の状況等の情報を一元的に収集し、経営陣への報告を行うことで、状況に応じて迅速かつ適切に対応できるモニタリングを行いました。2023年5月に日本での新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類感染症に移行したことに伴い、新型コロナウイルス対策本部は終了しました。

感染予防・拡大防止策

国内外の全従業員の健康と職場の安全を確保し、事業を行う各地域における感染拡大を防止するため、以下の各種施策を実施しました。

  1. 職場における感染予防策の周知・徹底と従業員の健康管理の徹底
  2. 罹患者やその疑いのある者が発生した場合の対応手順の周知・徹底
  3. オフィスにおける在宅勤務の本格運用、公共交通機関の利用制限、サテライトオフィスの活用
  4. 出張、会議、行事等の制限、WEB会議等のリモート対応
  5. 海外駐在員は、地域の流行状況、行動制限、医療水準、医療サービス体制の状態等に対応

事業継続

社会基盤を支える製品・サービスや、リサイクル事業等の当社グループの重要な事業を継続させ、顧客・社会からの要請に応えるため、拠点ごとの事業継続計画に則り、感染症の流行状況と国・行政の要請に応じ各種施策を実施しました。

  1. オフィスでは重要業務を特定のうえ、在宅勤務を原則とし、出社は最小限のBCP要員に限定し事業を継続
  2. 生産拠点では、地域の感染拡大に伴う従業員の通勤制限や操業制限に応じた複数のシナリオに基づき、継続する重要業務の特定とそれに応じた体制を整備
  3. 原材料調達先や業務委託先の分散化、物流ルートの複線化、顧客との連携強化等、サプライチェーンを強化

変化への適応

新型コロナウイルス感染症は、2023年5月に感染症法の扱いが5類感染症に移行しましたが、同様の感染症の拡大リスクは皆無ではありません。新型コロナウイルス感染症がもたらした、社会や事業環境、ビジネス構造の大きな変容に対応するばかりでなく、当社グループはこの機会に市場や顧客との連携をさらに強化し、テレワーク等の新たなワークスタイルへの移行や、DX(デジタルトランスフォーメーション)による経営スピードの向上、ビジネスモデルの再構築等、競争力を高めるためのさまざまな施策に取り組みます。

三菱マテリアル株式会社