環境マネジメント

環境管理責任者・事務局会(本社にて)

環境マネジメント

活動テーマ 2022年度の活動実績 自己
評価
2023年度以降の活動目標・予定
  • 環境法令の遵守
  • 環境負荷の継続的な改善
  • 環境法令遵守のための取り組み強化
  • 環境法令教育の徹底 
A
  • 環境法令遵守のための取り組み強化
  • 環境法令教育の徹底

自己評価 A:目標達成 B:概ね目標達成 C:目標未達成

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環境方針

本環境方針は、サステナビリティ基本方針に基づき定められ、三菱マテリアルグループの事業活動の基盤となるものであると考えています。

廃棄物リサイクル推進・環境配慮製品の提供
高度なリサイクル技術による廃棄物の再資源化を推進すると共に、原材料調達から素材・製品の開発、生産、流通、消費、廃棄そして再資源化を含むすべての事業活動の中で環境に配慮した付加価値の高い素材・製品を提供します。
脱炭素化の推進
エネルギーの削減等により自社の事業活動における脱炭素化を推進すると共に、地熱およびその他の再生可能エネルギーの開発と利用拡大等を図り、バリューチェーン全体の脱炭素化に取り組みます。
生物多様性への配慮
天然資源の開発等を含めバリューチェーン全体において生態系へ配慮した事業活動を行います。
水資源の有効利用・保全
冷却水や洗浄水等、事業活動のあらゆる場面で使用する水の再利用や水の循環利用等を通じて使用量の削減に取り組みます。
自社で保有する山林等の保全
木材資源の有効活用はもとより、脱炭素化、生物多様性、水環境の保全や地域レクリエーション等にも貢献する社有林等の適切な管理活動に取り組みます。
環境教育・社会との共生
全社員に対し関係する法規制や取り決め等に関する教育を継続的に実施し、事業活動における環境負荷の低減、環境汚染の防止に取り組みます。また、ステークホルダーとのコミュニケーションを積極的にとって環境保全活動を行います。

(改定:2021年12月1日)

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推進体制

当社グループでは、SCQ推進本部に専門部会としての環境管理部会を設置しグループ横断的な環境施策を立案し実行しています。各事業部門および各製造拠点には環境管理担当者を選任し、本社環境管理部署と密接な連携のもと汚染の未然防止、環境関連法令の遵守徹底を図っています。

環境管理体制

環境管理体制

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環境管理活動

環境教育

当社グループの各事業所では、ISO14001等の環境マネジメントシステムを運用し、法令遵守と環境パフォーマンスの向上に向けた継続的な活動を推進しています。環境技術や法令に関する知識を持つ管理者を育成するため、環境教育プログラムや法令チェックシステム等の開発・導入に取り組んでいます。
特に当社グループでは廃棄物管理を重要な業務と位置付け、金属製錬事業等ではリサイクル原料の使用を推進しています。各拠点では廃棄物管理に特化した管理者や担当者を選任し、法令教育の実施と独自の運用ルールにより、廃棄物の適正管理と関連法令の遵守を徹底しています。管理責任者には、廃棄物管理に関する最新の事例紹介等を通じて、廃棄物リスクや管理者に求められる役割の理解を目的とした教育を実施しています。実務担当者には廃棄物処理法の具体的な規制内容の理解を目的とした講習を実施しています。                          

2022年度環境教育実績

  受講者数
廃棄物管理教育 管理責任者向け 16名
実務担当者向け 121名

環境課題に対応するための情報の共有

事業所内で発生するさまざまな環境課題に対応するため、本社では環境専門スタッフによる相談窓口を設け、具体的なサポートを提供するとともに、本社と各事業所は有益な情報を共有し、環境課題に対応しています。
毎年、事業所の管理者層を対象に環境管理責任者・事務局会を開催し、環境に関する施策や課題の共有を行っています。また、実務者層を対象に事業所見学会を開催し、環境管理に関わる現場での運用方法や環境事故の未然防止について学ぶとともに、各事業所の担当者が情報交換する機会も提供しています。

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環境法規制の遵守

当社グループに適用される法律の改正情報は、社内イントラネットやEメールで周知し、大規模な改正や施設の変更等が必要となる改正は説明会を開催し、全事業所が対応できるように情報を共有しています。
現行の法規制については、各事業所で定期的にチェックし、監査部では環境関連法令の遵守状況、化学物質の取り扱い状況、施設の管理状況等を確認しています。不備が判明した場合は迅速に是正し、関連する事業所にも共有し、当社グループ全体の管理水準の向上を図っています。
施設の新設や変更等、一定規模以上の起業に際しては、各事業所だけでなく、本社関係部署でも届出の必要性を判断しています。また、事業所で必要な専門的な法令知識をサポートするために、2021年4月より施設の名称や仕様を入力すると、自動的に届出または許可申請が必要かどうかを判定するWEBシステムを運用しています。

環境法規制の遵守状況

水質汚濁、大気汚染、廃棄物処理等の環境保全に係る法規制の2022年度の遵守状況について、規制当局からの不利益処分(許可取り消し、操業停止命令、設備の使用停止命令、罰金等)はありませんでした。
臭気や廃棄物の苦情は5件寄せられましたが、迅速に原因を調査し、必要な対策を都度実施しました。

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環境リスクへの対応

当社グループは、環境方針に基づき、環境リスクを抽出し、顕在化を防止するための対策を講じています。
有害物質の漏えいによる大気、水域、土壌・地下水の汚染や、廃棄物の不適切な処理は、環境への悪影響だけでなく、当社グループの事業活動にも深刻な影響を与える可能性があります。各事業所では、事業内容や取り扱い物質、立地条件に応じてリスク評価を行い必要な対策を講じています。また、廃棄物の管理については、自らの不適切な処理を防止するだけでなく、処理委託先による不適正処理を見逃さないために現地確認等の対策も講じています。
当社グループが所有する休廃止鉱山(非鉄金属鉱山)では、鉱害防止のため、集積場の維持、採掘跡の坑道や坑内水の導水路の維持、およびこれらの場所から発生する重金属を含む酸性坑廃水の適切な処理を継続的に行っています。 生物多様性リスクも、当社グループにとって重要な環境リスクのひとつです。当社グループが原料(鉱石等)を調達する鉱山において、生物多様性の保全を含む環境・社会基準を設定し、その遵守状況を確認しています。また、当社グループが日本国内に保有する山林では、 森林の生態系サービスを高度に発揮させることを目標に森林管理を行っており、一定の基準を満たしていることが森林認証の取得により保証されています。
気候変動リスクの緩和に向けては、省エネ・CO2排出削減へ多角的に取り組むとともに、CO2回収・利用の研究や再生可能エネルギーの創出も行っています。淡水資源の不足が事業に及ぼすリスクについては、国内外の主要な事業拠点についてリスク評価を行うとともに、海水の有効利用、生産工程の効率化による節水、水リサイクル、そして廃水の浄化処理の徹底といった対策を行っています。

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環境会計

2022年度の投資額は、東北電力所における再生可能エネルギー発電設備の認定を受けた小又川新発電所(水力発電所)の建設や銅製錬所における大気汚染防止や水質汚濁防止を目的とする設備更新等をはじめとする投資により、約131億円となりました。
また、環境保全に係る費用は、排ガスや排水処理、廃棄物処分を含む環境対策や公害防止設備の維持管理等、約64億円となりました。

2022年度 環境保全のための支出[百万円]

分類 投資額 費用額
事業エリア内コスト 事業エリア内コスト合計 13,019 6,012
公害防止コスト 1,493 2,884
地球環境保全コスト 11,495 298
資源循環コスト 31 2,830
上・下流コスト 0 0
管理活動コスト 57 231
研究開発コスト 25 53
社会活動コスト 0 0
環境損傷コスト 5 104
合計 13,106 6,400
  • ※ 環境コストは、環境省の環境会計ガイドライン2005年版に基づいて算定しています。
  • ※ 集計対象範囲は単体です。

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環境負荷の全体像

INPUT・OUTPUT

以下の開示項目のうち、エネルギー投入量は多結晶シリコン事業と製塩事業に属する事業所のデータを含んでいます。

エネルギー投入量

2022年度のエネルギー投入量(単体)は2021年度に比べて約5%(0.5PJ:原油換算で1.3万kL)減少しました。これは一部の工場で生産量が減少したこともありますが、設備の電化や高効率機器の導入等の省エネルギー活動によるものです。

エネルギー投入量

グラフ

※ 1PJ(ペタジュール)=1015J=1,000TJ(テラジュール)

原材料・資材投入量

循環型社会構築への貢献のために、廃棄物の再資源化や副産物の循環利用に積極的に取り組んでおり、廃棄物、副産物等のリサイクル原料の利用を推進しています。
2022年度の原材料・資材投入量全体は、当社単体では2022年度からセメント事業を報告対象組織から除外したため、2021年度比93%減少し1.3百万tとなりました。このうち、廃棄物および副産物が占める割合は13.4%でした。

原材料・資材投入量

グラフ

※ 2021年度までの天然資源には、グループ内鉱山からの石灰石調達分が含まれます。

取水量

取水量の大部分は、銅製錬の施設で冷却水として利用する海水です。
2022年度の取水量全体は、当社単体では2022年度からセメント事業を報告対象組織から除外したため、2021年度比77%減少し94.7百万m3でした。そのうち、(海水を除く)淡水の取水量は11.4百万m3(全体の約12%)でした。

取水量(海水を除く)

グラフ

※ 水力発電に用いる淡水を除く
※ 冷却水用の海水を除く

大気・水域への排出量

工場排ガスに含まれる硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、およびばいじん等の大気への排出状況並びに排水に含まれる生物化学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)、窒素等の水域への排出状況についてモニタリングを行っています。2022年度の大気への排出量は、当社単体では2022年度からセメント事業を報告対象組織から除外したため、窒素酸化物(NOx)は2021年度比98%減少し220t、ばいじんは2021年度比89%減少し15tでした。

大気への排出量

グラフ

水域への排出量

グラフ

排水量

2022年度の排水量(海域への排水を除く)は、当社単体では2022年度からセメント事業を報告対象組織から除外したため、2021年度比14%減少し9.5百万m3でした。海域への排水量は、当社単体で85.3百万m3であり、ほとんどは冷却水として利用した海水です。

排水量(海域への排出を除く)

グラフ

※ 海域への排出を除く

化学物質の排出量・移動量

2022年度の排出量は、2022年度からセメント事業を報告対象組織から除外したことと、1拠点において多量に使用していた化学物質の使用終了に伴い、2021年度比48%減少し41tとなりました。移動量は2021年度比12%減少し37tとなりました。

化学物質の排出量・移動量

グラフ

産業廃棄物の排出量

2022年度の総排出量は、当社単体では2022年度からセメント事業を報告対象組織から除外したため、2021年度比19%減少し11.3千tでした。埋立処分量は、当社単体で2021年度比18%減少し4.7千tでした。
当社を含むグループ全体の総排出量は約45千tで、そのうち、約5割をリサイクルしています。

産業廃棄物発生量

グラフ

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三菱マテリアル株式会社

環境汚染防止

大気汚染防止

当社グループでは、製造工程での燃料の燃焼等に伴い、ばいじんやSOx等の大気汚染物質を排出しています。 特に、銅製錬所からの排出がその多くを占めています。各事業所では、発生源の操業の安定化・効率化や、高度な排ガス処理装置を設置して性能を適切に維持する等、大気汚染物質の排出抑制に取り組んでいます。

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水質汚濁防止

各事業所では、水質の汚濁を防止するために適切な排水処理を行い、排水基準よりも厳しい管理基準を設けて排水管理を行っています。さらに、化学物質や油の漏えいに備えるために、防液堤の設置や日常的な設備の点検を行っています。万が一漏えいした場合の拡散防止のための訓練等も定期的に実施しています。

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化学物質管理

当社グループの製造事業所では、多種多様な化学物質を取り扱っています。各事業所では、有害化学物質の使用量の削減、環境への漏出の防止、排出量の削減等の環境リスク低減の対策を実施しています。具体的には、それぞれの化学物質の特性に応じた工程の見直し、新設備の導入、有害性が低い物質への代替化等を促進しています。

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廃棄物管理

当社グループでは、資源循環型社会の構築に資するため、廃棄物の排出量の削減と、排出された廃棄物の再資源化に徹底的に取り組むとともに、リサイクル事業の展開も図っています。

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休廃止鉱山の管理

活動テーマ 2022年度の活動実績 自己
評価
2023年度以降の活動目標・予定
  • 休廃止鉱山の管理
  • 休廃止鉱山管理技術者への継続教育の実施
  • 老朽化設備の更新(継続)
  • 集積場の安定化(継続)
A
  • 休廃止鉱山管理技術者への継続教育の実施
  • 老朽化設備の更新(継続)
  • 集積場の安定化(継続)

自己評価 A:目標達成 B:概ね目標達成 C:目標未達成

当社グループの休廃止鉱山管理

当社は、鉱山業から発展した会社です。当社グループは国内に、石灰石鉱山、石炭鉱山、非鉄金属(銅・鉛・亜鉛等)の鉱山を保有していますが、このうち非鉄金属鉱山は、すべて採掘を休止または廃止し、現在では15ヵ所の拠点・事業所、21ヵ所の休廃止鉱山の管理をしています。当社グループは、行動規範第5章「【環境保全】私たちは、環境保全に努め、脱炭素化、資源の有効活用とその再資源化に取り組みます」に基づき、休廃止鉱山においても以下の管理業務を長期的に継続しています。

  • 鉱山跡地から発生する重金属を含む排水(坑廃水)の適切な処理
  • 集積場(鉱石の採掘に伴い発生した岩石や鉱さい、坑廃水処理で発生した殿物の集積場所)の維持
  • 採掘跡の地下空洞や坑道、坑廃水を導水する水路の点検・維持
  • 使用されていない坑口や陥没地等への立ち入りを防ぐ危害防止対策

一部の休廃止鉱山では坑道の一部を保存・整備し、操業当時の様子や鉱山技術等を後世に伝える文化的遺産あるいは観光施設としても活用されています。

当社グループの休廃止(非鉄金属)鉱山

当社グループの休廃止(非鉄金属)鉱山

休廃止鉱山における坑廃水処理の概要

坑廃水の発生は大別して2種類あります。鉱山の操業で鉱化帯に形成された地下坑道や採掘跡の空洞に降雨や地下水が浸透し、酸化された鉱石と接触することで発生する酸性の坑内水(坑水)と、降雨 や地表水が集積場の鉱さい等と接触して発生する浸透水(廃水)がありますが、これらはともに重金属を含んでいます。これらの坑廃水は処理場で中和処理を行い、排水基準内まで重金属類を除去して河川に放流しています。

休廃止鉱山における坑廃水処理の概要

休廃止鉱山の主な管理業務

当社グループは、坑廃水処理、集積場管理、坑道・坑口管理を行っています。坑廃水処理では適正な処理、集積場管理では堤体崩壊による集積物の流出防止、坑道・坑口管理では坑内水の導水路維持のための点検や、第三者の坑道内への侵入および坑口崩落による危害発生を防ぐための閉塞工事等を行っています。このうち、坑廃水処理では365日24時間体制で管理を行っています。

坑廃水処理施設(八谷鉱山)坑廃水処理施設(八谷鉱山)

集積場管理の例(尾去沢鉱山)集積場管理の例(尾去沢鉱山)

休廃止鉱山管理業務のデジタル化

管理レベルの向上と業務効率化のため、デジタル化を推進しています。

  • 操業データを自動的に収集してデジタルデータとして一元管理・活用することで、坑廃水処理施設等の操業を遠隔地でも管理できます。
  • 操業データを経時変化グラフ化等により可視化し、異常があった場合には遠隔警報を発報するなど、異常を早期に発見する仕組みをつくり、管理レベルを向上させています。
  • タブレット等のデバイスを用いて、坑廃水処理施設や集積場の点検と記録を行うことで点検結果をデジタルデータ化し、一元管理しています。これにより報告書を自動的に作成するなどして、業務を効率的に行っています。

操業データの可視化(データトレンド表示)操業データの可視化(データトレンド表示)

スマートフォンを用いた点検結果の記録(点検データデジタル化)スマートフォンを用いた点検結果の記録(点検データデジタル化)

設備更新・環境対策工事

2015年からは当社グループを挙げて、激甚化する自然災害に備えた鉱害防止対策工事に加え、大規模地震に備えた集積場安定化工事や坑廃水の発生源対策、坑廃水処理施設の能力増強、老朽化設備の更新にも取り組んでおり、工事費用は環境対策引当金として2015~2018年度までに計上し、2022年度には豪雨により被災した箇所の復旧・対策費用として一部追加計上しています。

集積場安定化工事

東日本大震災の際に他社が管理する集積場において集積物の流出事故が発生したことを受け、経済産業省は2012年11月に耐震性能に係る技術指針を改正しました。これに基づき、当社グループが管理する集積場の安定性評価を実施した結果、10ヵ所の集積場に対策が必要と判断されました。そのため、2015年度より対象集積場の安定化に向けた設計・対策工事を順次実施しており、8ヵ所の対策が完了しています。

八谷鉱山集積場安定化工事(完工後)八谷鉱山集積場安定化工事(完工後)

坑廃水処理関連の対策工事

近年の自然環境変化(大型台風やゲリラ豪雨)により坑廃水処理に係る操業負荷やリスクが増大しています。これらの低減を目的に、発生源対策工事、坑廃水処理施設の能力増強や老朽化設備の更新を進めています。発生源対策のひとつとして、最新技術(従来困難であった酸性の条件でも緑化が可能な技術)等を用いて、鉱化帯が露出した地表面の大規模な被覆工事を行っています。この工事により、降雨が直接鉱化帯へ接触することを防ぎ、処理水量や汚濁負荷量の低減が期待できます。

小真木鉱山(施工前)

小真木鉱山(施工後)小真木鉱山 発生源対策工事(上:施工前・下:施工後)

更新後の坑廃水処理施設(尾去沢鉱山)更新後の坑廃水処理施設(尾去沢鉱山)

人材育成

当社グループの非鉄金属鉱山はすべて休廃止鉱山となっており、閉山してから久しく時間が経過しています。そのため、鉱山管理技術者が高齢化・退職するなど、人材が減少の一途を辿っています。今後も持続的な休廃止鉱山の管理を行っていくためには、経験の浅い若年技術者のスキルアップが必要不可欠であり、人材育成の機会(各種実務者研修や資格取得講座等)を継続的に設け、Web研修やオンデマンド講座も活用して鉱山管理の技術継承に取り組んでいます。

実務者研修(坑道管理)実務者研修(坑道管理)

実務者研修(基礎教育)実務者研修(基礎教育)

産学連携活動

北海道大学に寄附講座『資源環境修復学研究室』を開設し、2017年度より鉱山環境の保全に関するさまざまな教育・研究活動を継続しています。当社グループでは、この寄附講座と連携し、北海道大学やその他大学・研究機関による協力を得て、鉱山環境を修復・保全するための技術開発等に取り組んでいます。これらの研究成果は論文やシンポジウム等で発表し、広く周知を進めています。

  • 鉱山跡地の緑化(筑波大学・北海道大学):鉱山跡地における内生菌による植物の重金属耐性に関する調査・研究や自生植物による緑化の調査・研究を進め、これまで植生が根付き難かった鉱山跡地における緑化促進に取り組んでいます。
  • 生態影響評価(国立研究開発法人産業技術総合研究所):坑廃水の流入による河川への生態影響について、野外調査を用いた水生生物への影響の観点からの評価に取り組んでいます。
  • 遠隔監視技術開発(国立研究開発法人産業技術総合研究所):鉱山地域のように電力・通信網のない遠隔地の管理データを収集できる技術として、電波指向性・超省電力化した遠隔モニタリングシステムを開発しています。
  • そのほか(北海道大学):坑廃水処理に関する操業管理上の課題を改善するべく、中和殿物からの重金属類溶出リスクの評価や、低濃度条件下でのマンガン酸化物の沈積メカニズムについての研究を新たに開始しました。

寄附講座による活動(現場見学)寄附講座による活動(現場見学)

鉱山跡地での緑化調査鉱山跡地での緑化調査

河川生態調査(底生生物の採取)河川生態調査(底生生物の採取)

地域住民とのコミュニケーション

当社の休廃止鉱山における鉱害防止の取り組みを地域の方々に知っていただくために、工事説明会や施設見学会を積極的に開催しています。また、植樹や稚魚の放流、イベント・祭礼への参加、協賛を通して環境保全活動・地域貢献に努めています。その他、国内外の学生や研究者による鉱山施設の視察を受け入れ、鉱害防止に関する研究開発や技術の研鑽の場として提供しています。

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三菱マテリアル株式会社

気候変動に関するリスクと機会

水に関するマネジメント

当社グループにおける水使用量の大部分(約88%)は冷却水としての海水であり、淡水(工業用水や地下水等)の使用量は比較的少ない状況です。しかし、淡水不足が事業に影響を及ぼす可能性があるため、当社グループの事業運営では、必要な水量および水質を確保することが不可欠です。当社では環境方針の中で、「水資源有効利用・保全」を掲げており、冷却水や洗浄水等、事業活動のあらゆる場面で使用する水の再利用や水の循環利用等を通じて使用量の削減に取り組んでいます。
また、近年頻発する台風、洪水災害等の水関連の問題とその影響も考慮し、リスク管理も行っています。事業所では水リスクの低減策をそれぞれ進めており、淡水資源の使用量の削減に向けて、海水の有効利用、生産過程の効率化や水使用量の少ない設備の導入による節水、水リサイクル、廃水の浄化処理の徹底をしています。洪水対策として、建屋やポンプ、電気設備等の嵩上げや排水ポンプの設置、増水を想定した訓練等に取り組んでいます。また、事業所からの排水水質の異常や水質事故の防止のため、法規制を上回る独自の排水基準の設定し管理するほか、水質異常を検知するセンサーや自動排水停止システムの導入等にも取り組んでいます。

水リスク評価の取り組み状況

当社グループの製造事業所(一部は研究機関も含む)における水リスクの状況を把握するために、世界資源研究所(WRI)が開発した水リスク評価ツール「Aqueduct(アキダクト)」を使用して、水資源確保に関連するリスクや洪水の影響を受けるリスク等の項目について、事業所ごとに評価を行っています。水ストレスが高いと評価されたグループ会社拠点は8ヵ所ありましたが、これらの拠点に関する売り上げがグループ会社に占める割合は7%です。2022年度の取水量は99,585千㎥、水使用量は1,363千㎥でした。さらに、より実態に即した水リスク評価とするため、各事業所の過去の水リスクの顕在化状況(洪水、渇水、取水した水の水質悪化に関する発生履歴等)や事業活動に関連する水使用状況(淡水・地下水の使用量、排水中の汚濁負荷物質の排出量)等の情報を考慮して、Aqueductによる水リスクの評価結果を補完しています。
補完した水リスクの評価結果は、評価項目ごとにリスクスコアを表したレーダーチャートによって事業所ごとの水リスクを可視化し、共有しています。各事業所では、高リスクと評価された項目をその事業所独自のリスクとして登録し、水リスクの低減を含む対応を策定・実施しリスク管理を行っています。

事業所別の水リスクのレーダーチャート 表示例

図

水リスクの項目のうち、「水質リスク」については取水した水の水質悪化による操業への影響や事業所排水による環境への影響、「規制・評判リスク」については取水・排水に対する規制の強さ・地域の評判の観点から、リスクを取水と排水に分けて評価しています。

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三菱マテリアル株式会社, MBS, 株式会社ディ・エフ・エフ, 株式会社トランス・アジア, 株式会社アイディアシップ, KPMGあずさサステナビリティ

生物多様性の保全

自然環境の保全

活動テーマ 2022年度の活動実績 自己
評価
2023年度以降の活動目標・予定
  • 持続可能な社有林運営を通じた地域、社会、地球環境への貢献
  • SGEC森林認証の定期審査を受審し、審査に合格した(現地審査は手稲山林、美唄山林)
A
  • SGEC森林認証の維持
  • 森林経営計画に基づく森林整備を適正に推進し、除間伐133.56ha、植栽11.19ha、下刈59.26haの森林整備を実施
A
  • 森林経営計画に基づく適正な森林整備による森林環境保全推進
  • 環境面、経済面の両立を目指す森づくり推進として、天然の力を活かした森づくりを試行
A
  • さまざまな効果的な森林づくり実践による、災害に強く公益的機能の高い美しい森林の追求
  • 災害に強い森づくりの推進として、手稲山林、生野山林で小規模作業路による間伐を実践
A
  • 間伐後の環境負荷が小さく、仕上がりが美しい馬搬(馬を使った木材集材方法)を実践(早来山林)
A
  • 生物多様性の保全状況や森林整備による生態系サービス(公益的機能)の変化、森林の成長量等をより的確に評価するため、スマートフォンアプリを導入する等モニタリング活動を強化
A
  • 各種モニタリング活動の確実な実施と、研究機関と連携した生態系サービス(公益的機能)の定量的評価方法の確立
  • ドローンや衛星データ等のリモートセンシング技術を活用した森林資源量の把握試験を実施し、一定の精度での推定を実現
A
  • リモートセンシングやICT、IoT技術を活用した森林情報の効率的な把握およびデータ整理の推進
  • 社有林地域の保育園に対し社有林の木を用いて製作したクリスマスツリーや、社有林木材を活用した「木の卒園証書」を寄贈、植樹イベントを実施
A
  • 社有林関連サービスによる地域貢献の継続(クリスマスツリーの提供等の取り組み)
  • 社有林産木材の有効活用の一環として社有林が所在する北海道安平町の小中学校の建築材として木材を提供
A
  • 社有林産木材の高付加価値活用推進による社有林価値の向上と、経済的に持続可能な森林経営への貢献
  • 地元NPO団体の自然体験活動、林業普及を目的とした研修、大学等の研究機関の調査、スポーツ大会等のフィールドとして社有林を解放
A
  • レクリエーション、教育、研究、研修フィールド等として社有林の提供を推進

自己評価 A:目標達成 B:概ね目標達成 C:目標未達成

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生物多様性への配慮

当社グループは、行動規範第5章に「生物多様性に配慮して、自然との共生に努めます」と定め、生物多様性への配慮を事業の基本姿勢として社内外に明示しています。さらに、環境方針では「天然資源の開発等を含めバリューチェーン全体において生態系に配慮した事業活動を行います」としています。
当社は主原料である銅精鉱を海外鉱山からの輸入に依存しており、安定調達のため海外鉱山への出資を進めていますが、生物多様性への影響が特に顕著なのは、出資先である海外鉱山です。そのため、当社グループでは、法令遵守および “Social License to Operate(社会的営業許可)”という考え方を重視し、各鉱山では、事業活動を行う全ての採掘現場においてレクラメーション(再生)に取り組み、生態系への影響最小化に努めています。各鉱山では、将来の閉山等に向けた対応を円滑かつ適切に行うために、事業活動を行う国・地域の法律や「持続可能な開発のための10原則」等の国際的な取り決めに定められた環境影響評価を実施し、行政、地域住民等のステークホルダーとの対話を通じて、適切な閉山計画の策定を行っています。
当社が出資し、重要な調達先でもある銅鉱山(カッパーマウンテン(カナダ)、エスコンディーダ(チリ)、ロスペランブレス(チリ)、マントベルデ(チリ))では、いずれも採掘事業の開始前に適切な環境影響評価が実施され、開始後も継続的な環境モニタリングが実施されています。また、開発プロジェクトとして進行中の銅鉱山(サフラナル(ペルー))では2023年5月に環境許認可を取得し、同じく開発プロジェクトであるナモシ(フィジー)においても、環境影響評価のための基礎調査の実施と生物多様性保全のためのデータ収集を行っています。
カッパーマウンテンでは、社会・環境との共生を図る上で社会の期待や環境規制の要件も考慮し、カナダ鉱業協会の持続可能な鉱業に向けた(TSM)イニシアチブの鉱山閉鎖フレームワークとも連携した閉山計画を作成しています。この計画に基づき、生物多様性の保全管理とレクラメーション(再生)に取り組んでおり、環境負荷の最小化に焦点を当て、閉山前にレクラメーション可能な領域を増やしています。具体的には、絶滅危惧種、保護地域、重要生息地等その土地の状況や事業活動による影響度を特定した上で、物理的安定性の向上、水質と水路の保護、土砂保持と侵食制御、土壌の回収と、適切な植生の確保、外来種の排除など、最終的な土地利用とレクラメーションを達成するための戦略を策定し、責任をもって対応しています。これらの戦略は、植生、野生生物、水、水生成分の生物多様性保全を管理する計画、およびレクラメーションの詳細なモニタリング計画とともに、カッパーマウンテンの生物多様性保全管理計画に記載されています。
マントベルデでは、開発プロジェクトを通じて得た生物多様性データを、生物多様性に関する情報共有ネットワークであるGBIF(Global Biodiversity Information Facility)に提出しています。具体的には、グアナコの食餌の研究やキツネの生息範囲の研究、特異種の種子収集と保存等の取り組みを行っています。
当社グループは、出資者として鉱山を運営する事業主体に対し、こうした取り組みが行われることを、事前に確認し、促進しています。また、出資を行っていない鉱山からの調達も、「金属事業カンパニーCSR調達基準」に則り、自然保護区域への配慮や生物多様性の保護がなされていることを確認しています。
当社グループの製造事業所でも、各事業所の特性に応じて、生物多様性の保全に取り組んでいます。例えば、直島製錬所(香川県香川郡直島町)では、少雨・乾燥土壌で植物が育ちにくい状況や過去の森林火災などにより山林が一部焼失した経緯から、その植生促進と回復を目指し、年間1ヘクタールの植林活動を実施しています。また、瀬戸内の自然環境を保護するため、所内で排出される排ガスや排水については、国の基準よりも厳しく設定し、処理を徹底しています。

当社は、日本各地に1.4万haの森林を保有し、そこに生息する動植物の生息環境に配慮する森林経営手法を実践しています。動植物のモニタリング活動や、生息を確認した希少種のレッドリスト化も行っています。北海道内の9ヵ所の山林では生物多様性にも配慮した持続可能な森林経営に関する認証を取得しています。今後も、当社グループの事業活動と生物多様性との接点に配慮し、広い視野で保全に取り組んでいきます。

また、当社は2022年4月、環境省が主導する「生物多様性のための30by30(サーティ・バイ・サーティ)アライアンス」(アライアンス)に、参加企業として登録されました。本アライアンスは2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復させる(Nature Positive)国際目標の達成に向けて設立された有志連合です。日本ではこの目標達成に向け、2030年までに自国の陸域・海域の少なくとも30%を保全・保護すること(30by30)の達成を目指し、国立公園等の保護地域の拡充に加え保護地域以外の企業林等で生物多様性保全に資する地域をOECM(Other Effective area-based Conservation Measures)として設定することとしています。

「マテリアルの森 手稲山林」 が環境省の「自然共生サイト」認定
~社有林の生物多様性保全が評価~

当社社有林「マテリアルの森 手稲山林」(以下、「手稲山林」)が環境省の「自然共生サイト」認定を受けました。

「自然共生サイト」とは民間の取り組みなどによって生物多様性の保全が図られている区域を国が認定する区域です。認定区域は保護地域との重複を除き、「OECM(*)」として国際データベースに登録されます。

  • (*) Other Effective area-based Conservation Measures、公的な保護地域以外の企業林などで生物多様性保全に資する地域

当社はこれまで、環境省が主導する「生物多様性のための30by30(サーティ・バイ・サーティ)アライアンス」への参加や、自然共生サイトの認定の仕組み構築を支援する「認定実証事業」にも手稲山林の情報を提供するなど、生物多様性保全に関するさまざまな活動を進めてきました。
このたび認定を受けた手稲山林は、札幌市の市街地に隣接する都市近郊林でありながら、多様な動植物が生息しています。その生物多様性を保全するための森林整備における環境負荷の低い作業システムの採用や、デジタルツールを活用したモニタリング活動などが評価されました。

ロゴ

マテリアルの森 手稲山林

マテリアルの森 手稲山林

鉱山における生物多様性への取り組み

銅鉱山(カッパーマウンテン鉱山)での水質モニタリング

当社は、カナダ・ブリティッシュコロンビア州に位置するカッパーマウンテン鉱山に出資し、生物多様性に配慮した企業経営に取り組んでいます。
カッパーマウンテンは、採掘作業から閉鎖まで安全に移行するために、包括的な漸進的レクラメーション利用計画から鉱山計画プロセスを開始します。この計画には、閉鎖の計画、レクラメーションのための適切な資源の割り当て、操業の初期段階における地元の先住民族を含むステークホルダーとの関与などが含まれます。カッパーマウンテンでは、先住民族と協力して、最終的な土地利用の目的を定め、当社の操業の社会的、経済的、環境的、文化的側面に関する基本条件と、鉱山跡地で望ましいレクラメーションや最終土地利用を明確化し、その理解・浸透を図っています。
カッパーマウンテンの漸進的なレクラメーションは、鉱山計画の段階から始まり、鉱山操業の一部として継続的に実施されています。この漸進的なレクラメーションは、2018年に小規模な初期試験で開始され、今後10年間で毎年25ヘクタールのレクラメーションを基本としています。
2022年には、サイト周辺のすべてのレクラメーションエリアでのモニタリングを完了しました。これには、既存の植生種とその全体的な健全性の観察の記録が含まれ、土壌と植物の健全性を完全に把握するため、土壌と植生についてさまざまな栄養素の検査も行いました。2023年には、以前にレクラメーションが確認された地域の非経済的岩石貯留地(NERSA)への低木や樹木の植樹も開始する予定です。
カッパーマウンテンにおけるレクラメーションモニタリング結果を次に示します。

カッパーマウンテンの漸進的なレクラメーション
漸進的なレクラメーション活動(単位:ha)
2022 20.31
2021 23.97
2020 20.99
2019 7.47

2022年に、ウォルフ・クリーク再編成エリアという鉱山近隣の小さな沢で、樹木と低木の植樹が行われました。

  • 976本の樹木の植樹
  • 7,500本の低木の植樹
  • 2,500本のヤナギとハナミズキのステークの植樹

また、同鉱山では、同州の水質ガイドラインに従い、鉱山の河川下流での水質モニタリングを行うとともに、鳥類、哺乳類、両生類、水生生物、および生息地等生態系への影響を把握するため、周辺地域の生物多様性の調査を継続的に実施しています。
2019年より上記のウォルフ・クリークの一部を移設してFHOP(魚類生息地再生オフセット・プロジェクト)を開始し、以降、環境モニタリングを継続して実施してきました。この移設された沢の生物の生息域がニジマス等に良好な産卵・飼育環境となっていることが認められ、2022年には、TRCR(再生技術調査会)から金属鉱山部門賞を受賞しました。

FHOPサイトFHOPサイト

ニジマスニジマス

銅・金鉱床開発プロジェクトでの環境影響評価

ペルー南部に位置するサフラナル開発プロジェクトでは、EIA取得の際に実施した環境基礎調査の中で、開発時に想定される環境への影響を最小限に抑制するための調査解析も行っており、動植物の生態系に影響を及ぼす可能性がある場合を想定した新たな生息域の確保等の対策を検討しています。

※ Environmental Impact Assessment (環境影響評価)

探鉱試錐調査探鉱試錐調査

河川の水質調査河川の水質調査

発電所における環境影響評価

安比地熱(株)の事業化における環境影響評価の実施

当社は、2015年に三菱ガス化学(株)と共同で岩手県八幡平市安比高原の西方にて安比地熱(株)を設立し、さらに2018年に電源開発(株)が加わり3社で事業化を推進しています。この事業では、2024年に14,900kWの地熱発電所運転開始を目指しています。安比地熱(株)は、2015年に環境影響評価(環境アセスメント)の手続きを開始し、安比地熱発電所の設置により周辺の環境に及ぼす影響について調査、予測および評価を行いました。2018年1月に経済産業大臣より環境影響評価書に対する確定通知を受領し、2019年8月に建設工事を開始しています。

小又川新発電所での自主評価実施

当社は、秋田県北秋田市米代川水系阿仁川支川小又川において、森吉ダム直下に発電所を保有しており、その発電後の放流水を活用する新規水力発電所となる「小又川新発電所(出力10,326kW)」の建設工事を2019年5月に着工しました。新発電所の建設計画では、周辺環境に与える影響について自主環境アセスメントを行うとともに、周辺の河川環境保全のために新たに河川に適した正常流量の放流を計画しています。また、建設工事では、再生可能エネルギーである既存の水力発電所から供給された電力を使用して導水路トンネル(TBM工法)の建設を実施し、建設予定地で伐採された樹木は再資源化する等、環境に配慮した取り組みを実施しています。

インドネシア・カパー・スメルティング社(インドネシア)における生物多様性の保護活動

希少動物保護活動

インドネシア・カパー・スメルティング社では、環境保護や生物多様性に関する活動をさらに発展させるため、2018年からタマンサファリ・インドネシアの希少動物保護プログラムに協賛しています。
このプログラムは、IUCN(国際自然保護連合)が絶滅危惧種に指定した生物の繁殖や野生放流を通じて、種の持続可能性を確保することを目的としています。同社では、ジャワ島の固有種であるジャワクマタカの保護に参画しています。
ジャワクマタカは、インドネシアの国章(ガルーダ・パンチャシラ)の神鳥「ガルーダ」と特徴を同じくしていることから「国鳥」に指定されていますが、近年の熱帯雨林の破壊や密猟のため個体数の減少が懸念されています。同社では、このプログラムを通じて、国の象徴でもあるジャワクマタカの繁殖だけではなく、将来を担う子どもたちへの教育活動やジャワクマタカの生態研究をサポートすることで、生物多様性の保全に貢献していきたいと考えています。

ジャワクマタカジャワクマタカ
写真提供:タマンサファリ・インドネシア

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三菱マテリアル株式会社

マテリアルの森

社有林の持続可能な管理運営に向けて

持続可能な森林経営の基本姿勢

当社は、北海道を中心に全国で1.3万haもの森林を保有する、日本国内有数の大規模森林所有者です。かつては自社の鉱山や炭鉱の坑道を支える坑木の供給を目的に森林を保有していましたが、国内の鉱山や炭鉱の閉山等に伴い、森林に求められる役割、期待も大きく変化してきました。
現在は、再生可能資源としての木材の生産に加え、市民のレクリエーションの場の提供、CO2固定による地球温暖化の防止、そして生物多様性の保全といった、森林の生態系サービス(公益的機能)を高度に発揮させることを目標に森林管理を行っています。
それぞれの社有林は、立地や環境条件が区域ごとに異なり、求められる森林の機能も変わるため、当社では、水土・生態系保全区域、保健文化利用区域、天然生林択伐利用区域、資源循環利用区域の4つの区域区分(ゾーニング)を導入し、それぞれの区域で強化すべき機能と管理方法を明確化しています。このようなきめ細かな森林管理を徹底しながら、「天然力を活かし、機能・活用の最大化を図り、より社会に必要とされる『美しい森林』」を100年後の目指す姿としています。
持続可能な森林経営への取り組みに対する第三者評価として、2012年10月1日に北海道の早来山林についてSGEC森林認証を取得しました。その後、SGECが国際的な森林認証制度であるPEFCとの相互承認への移行手続きを行い、認証基準を改正・施行したことを受け、2015年9月1日には早来山林を含む北海道内の8山林について、SGECの新基準による森林認証を一括取得しました。

SGEC

社有林の区域区分(ゾーニング)と管理方針

区域 内容
水土・生態系保全区域 水辺林等の天然生林を維持、人工林であれば天然生林へ転換を図る
保健文化利用区域 見本林の設置、森林散策、森林レクリエーション施設設置等
天然生林択伐利用区域 成長量を超えない範囲で天然生林から抜き伐りし、持続的に有用広葉樹等を生産
資源循環利用区域 脱炭素化に貢献するため人工林循環サイクルでの植林と間伐を積極的に促進

三菱マテリアル社有林DATA

全国31ヵ所
総面積 約13,000ha
SGEC認証取得面積 約10,000ha
  • ※ 北海道内の8山林
天然林面積 約6,000ha
人工林面積 約7,000ha

早来山林早来山林
水土・生態系保全区域として残した天然生林(自然に発芽した樹木でできた林)、資源循環利用区域として効率的な木材生産を図るカラマツの造林地(人の手で植えられた苗木で構成された林)が、適切なゾーニングに基づきモザイク状に配置されています。

社有林がもたらす価値:循環型社会への貢献、地域社会への貢献、低炭素社会への貢献、生物多様性の保全

当社社有林の分布と面積地図

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1. 循環型社会への貢献
〜再生可能資源である「木材」を社会に供給〜

木材は優れた再生可能資源のひとつです。当社は、資源循環利用区域や天然生林択伐利用区域を中心に年間約1万㎥の木材を産出し、この木材は建築用材から木質バイオマス燃料まで、あらゆる原料・燃料として社会に供給され循環型社会の構築に貢献しています。木材の持続可能な供給に向け、ゾーニングごとに定められた管理方針に従って、適切に森林資源の維持、更新を行っています。資源循環利用区域のうち人工林施業を行う区域では、伐採と植林を循環させ、カラマツやスギ等の針葉樹材の持続可能な安定供給を実現しています。また、天然生林択伐利用区域では、森林の成長量を超えない範囲での間伐や択伐(一部の木を選んで伐採すること)と、適切な天然更新(自然に落下した種子から稚樹が芽生えること)の促進により成長力旺盛で健全な森林の状態を維持し、広葉樹材の持続可能な供給を目指しています。天然生林は人工林に比べ、さまざまな樹種が混在し、多種の樹種に対応した適切かつ豊富な知識や技術が必要となります。そのため、当社では、そうした天然生林施業に関する知見が豊富なスイスの森林管理者(フォレスター)を招聘する等し、天然生林に関する知識や技術力の研鑽に努めています。
国内の天然生林は、戦後に人工林に置き換えられたため、天然生林で育つ広葉樹の枯渇が慢性化しています。特に広葉樹材を材料とする家具産業では、外国産の木材への依存が高まっています。当社では、人工林の一部を天然生林へと転換し、広葉樹資源の回復に取り組んでいます。また、国産広葉樹材の循環利用を推進するために、社有林から産出した広葉樹材を、本社の食堂テーブルや森林管理部門がある札幌オフィスの会議テープルや椅子といったオフィス家具等として活用し、まずは自社内で循環利用を実践しています。

間伐材を社会に供給間伐材を社会に供給

スイスの森林管理者を招聘した森づくり研修スイスの森林管理者を招聘した森づくり研修

新本社食堂のビッグテーブル本社食堂のビッグテーブル

社有林材を活用した学校が北海道で開校

社有林材が使用された校舎社有林材が使用された校舎

2023年4月に開校した、社有林が所在する町内の小中一貫の義務教育学校の新校舎の梁や柱などに、当社が所有する早来山林にて、森林整備のために伐採されたカラマツ原木丸太が使用されました。

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2. 地域社会への貢献
〜地域の方が安心でき、豊かな自然と触れ合える森に〜

社有林は、会社の資産であると同時に、その地域を形成する重要な環境要素のひとつでもあります。適切な森林管理により、水源涵養機能、土砂流出防止機能、レクリエーション機能等の生態系サービスの質を向上させ、地域社会に貢献しています。
また、都市近郊に位置する社有林は、「環境林」として位置付け、地域の皆さまに自然環境を身近に楽しんでいただけるよう一部を一般開放しています。札幌市手稲区に所在する手稲山林は、市中心部からの交通アクセスが良く豊かな森林に恵まれているため札幌市市民の森、自然歩道、青少年キャンプ場等の用途で一部を提供しています。また、地元NPO団体が主催する自然体験活動や、大学等の研究機関の研究フィールド等としても利用されています。こうした地域の皆さまに、より有意義に社有林を活用していただけるよう、それぞれの用途に適した環境に維持することが重要です。明るい森とするための間伐や、危険木の除去、遊歩道の整備等も積極的に行っています。社有林を地域の方に利用いただくだけでなく、植樹祭や育樹祭等の環境イベントを開催し、地域の皆さまに生物多様性をはじめとする森の大切さや楽しさを知ってもらう取り組みを積極的に推進しています。さらに、当社は、過去に発生した自然災害による被害地域で積極的な支援活動を実施しています。また、2016年に台風被害に遭った北海道森町町有林の復旧整備に取り組み、2018年に北海道胆振東部地震で被災した厚真町の保育園には、社有林の木を活用して製作したクリスマスツリーの寄贈、森林整備で発生した広葉樹の端材を用いて、自然との触れ合いの場としてマテリアルの森を活用していただいている保育園への木の卒園証書の寄贈等の活動を継続しています。
今後も、こうした積極的な取り組みを通じて地域社会に貢献し、地域の中に「マテリアルの森」がより一層価値あるものとして根付くよう努力していきます。

社有林で環境イベントを開催(樹名板の製作)社有林で環境イベントを開催(樹名板の製作)

胆振東部地震で被災した厚真町保育園にクリスマスツリーを寄贈胆振東部地震で被災した厚真町保育園にクリスマスツリーを寄贈

社有林を地元小学生の林業体験学習の場として提供

伐採作業の見学伐採作業の見学

当社は、社有林のある町の小学生を対象とした教育プログラムの中で「マテリアルの森」を体験のフィールドとして提供しました。このプログラムでは、植栽や伐採作業などの活動を見学・体験いただくことで、当社と地域との結びつきを深めています。

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3. 脱炭素社会への貢献
〜CO2の固定〜

森林の持つ重要な生態系サービスのひとつにCO2の固定機能があります。当社は、日本国内有数の大規模森林所有者として、森林の適切な整備を着実に推進し、森林の有するCO2の固定機能を最大限に高めることで、地球温暖化の防止に貢献しています。現在当社の社有林は、年間5.3万tのCO2を固定しており、これは国民約2万7千人分)と試算されます。
樹木のCO2固定能力は、若齢から中齢期にかけて最大となり、その後は徐々に減少していきます。そのため、適切なタイミングで樹木の伐採を行い、新たな植栽や天然更新によって森林を再生させることで、長期的に森林のCO2固定能力高い水準で維持するよう努めています。
また、森林整備に伴い発生する間伐材についても、利用可能な木材は林内に放置せず、積極的な活用を通じてCO2の固定に努めています。特に建築材や家具材など長期にわたり使用される優良大径材の生産を重視し、効果的なCO2固定に努めています。

  • ※ 試算値の求め方: 成長量(m3)×材容積重(t/m3)×炭素換算率×樹幹に対する木全体比×二酸化炭素分子量/炭素分子量

カラマツ林大きく育ったカラマツ

樹齢と炭素吸収・排出量との関係図

  • ※ 独立行政法人森林総合研究所
    (現.国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所)
    資料を一部加工して引用

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4. 生物多様性の保全
〜より多くの生物が生息できる環境を維持するために〜

社有林は、多様な生物の生息地として非常に重要であるため、木材生産等のさまざまな活動が生物の生息環境に悪影響を及ぼさぬよう細心の注意を払っています。
特に、生物の移動経路である尾根林や河畔林等の「緑の回廊」は、野生動物の生息地の拡大や相互交流にとって非常に重要な森林であるため、原則として皆伐(樹木をすべて伐ること)を禁止しています。木材生産を積極的に行う人工林でも、大面積での皆伐は生物多様性を低下させる可能性があるため、皆伐を実施する場合は、小面積かつ分散させるようにしています。また、現状が人工林であっても、効率的な人工林経営が難しいと判断される区域は、将来的に皆伐せず、より生物多様性が豊かな天然生林への誘導を目指しています。その他にも、伐採後に完全な裸地をつくらない「複層林施業」や針葉樹主体の資源循環利用区域においても自然に侵入してきた広葉樹を残すことで林内の構造を多様化させる「針広混交林施業」を一部で導入することにより、生物多様性の保全につながる森林整備方法も取り入れています。このようなさまざまな森林タイプを山林内に配置することで、山林全体としての環境の多様性を向上させ、生物他多様性の保全に貢献しています。
また、動植物のモニタリング活動も積極的に実施しています。日常的な巡視活動や、山林内への多数の定点モニタリング地点の設置により、動植物の生息状況を定期的に把握しており、森林整備による改善効果、あるいは悪影響がないか確認しています。また、特に伐採を伴う森林整備を行う際には、伐採前後で動植物に悪影響が生じていないことを確認するため、別途モニタリング調査を行っています。伐採前のモニタリングにより、事前に希少動植物が生息していることが判明した場合には、影響を与えない作業時季や方法への切り替えや計画の延期等を検討します。
生息を確認した希少動植物種(環境省や北海道が定めるレッドリストにある上位危惧種)は、「三菱マテリアル社有林希少動植物レッドリスト」として取りまとめ、林内へ立ち入る関係者を対象に定期的に研修会を設け、生物多様性の保全に努めるよう注意喚起をしています。

日常モニタリング活動日常モニタリング活動

動物撮影用定点カメラ動物撮影用定点カメラ

エゾクロテンエゾクロテン

クマゲラクマゲラ

サクラマスサクラマス

クリンソウクリンソウ

カタクリカタクリ

社有林における生物多様性保全方針

  1. 施業に当たっては、別に定める「生物多様性の保全に配慮した施業指針」に従い、生物多様性の維持・保全のため、多様な植生、多様な育成段階からなる健全なバランスの良い、健全な森林の確保と貴重な動植物の育成環境の保全に配慮する。
  2. 貴重な自然植生、動物等について生育・生息可能性の高い種を抽出し、「貴重な自然植生、動物等一覧表」を職員及び請負業者(作業従事者)に配布し、現場に出向く際に携帯させモニタリングを実施する。
  3. ネイチャーポジティブや 30by30 目標に貢献するため自然共生サイト認定などの生物多様性保全に資する活動を推進する。
  4. 専門家による現地研修会等を実施し、職員の知識向上を図る。

(社有林管理経営計画書より抜粋)

三菱マテリアル株式会社