活動テーマ | 2023年度の 活動実績 |
自己 評価 |
2024年度以降の 活動目標・予定 |
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自己評価 A:目標達成 B:概ね目標達成 C:目標未達成
当社は、北海道を中心に全国で1.3万haもの森林を保有する、日本国内有数の大規模森林所有者です。かつては自社の鉱山や炭鉱の坑道を支える坑木の供給を目的に森林を保有していましたが、国内の鉱山や炭鉱の閉山等に伴い、森林に求められる役割、期待も大きく変化してきました。
現在は、再生可能資源としての木材の生産に加え、市民のレクリエーションの場の提供、CO2固定による地球温暖化の防止、そして生物多様性の保全といった、森林の生態系サービス(公益的機能)を高度に発揮させることを目標に森林管理を行っています。
それぞれの社有林は、立地や環境条件が区域ごとに異なり、求められる森林の機能も変わるため、当社では、水土・生態系保全区域、保健文化利用区域、天然生林択伐利用区域、資源循環利用区域の4つの区域区分(ゾーニング)を導入し、それぞれの区域で強化すべき機能と管理方法を明確化しています。このようなきめ細かな森林管理を徹底しながら、「天然力を活かし、機能・活用の最大化を図り、より社会に必要とされる『美しい森林』」を100年後の目指す姿としています。
持続可能な森林経営への取り組みに対する第三者評価として、2012年10月1日に北海道の早来山林についてSGEC森林認証を取得しました。その後、SGECが国際的な森林認証制度であるPEFCとの相互承認への移行手続きを行い、認証基準を改正・施行したことを受け、2015年9月1日には早来山林を含む北海道内の8山林について、SGECの新基準による森林認証を一括取得しました。
区域 | 内容 |
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水土・生態系保全区域 | 水辺林等の天然生林を維持、人工林であれば天然生林へ転換を図る |
保健文化利用区域 | 見本林の設置、森林散策、森林レクリエーション施設設置等 |
天然生林択伐利用区域 | 成長量を超えない範囲で天然生林から抜き伐りし、持続的に有用広葉樹等を生産 |
資源循環利用区域 | 脱炭素化に貢献するため人工林循環サイクルでの植林と間伐を積極的に促進 |
全国30ヵ所 | |
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総面積 | 約13,000ha |
SGEC認証取得面積 | 約10,000ha
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天然林面積 | 約6,000ha |
人工林面積 | 約7,000ha |
当社社有林の分布と面積
木材は優れた再生可能資源のひとつです。当社は、資源循環利用区域や天然生林択伐利用区域を中心に年間約1万㎥の木材を産出し、この木材は建築用材から木質バイオマス燃料まで、あらゆる原料・燃料として社会に供給され循環型社会の構築に貢献しています。木材の持続可能な供給に向け、ゾーニングごとに定められた管理方針に従って、適切に森林資源の維持、更新を行っています。資源循環利用区域のうち人工林施業を行う区域では、伐採と植林を循環させ、カラマツやスギ等の針葉樹材の持続可能な安定供給を実現しています。また、天然生林択伐利用区域では、森林の成長量を超えない範囲での間伐や択伐(一部の木を選んで伐採すること)と、適切な天然更新(自然に落下した種子から稚樹が芽生えること)の促進により成長力旺盛で健全な森林の状態を維持し、広葉樹材の持続可能な供給を目指しています。天然生林は人工林に比べ、さまざまな樹種が混在し、多種の樹種に対応した適切かつ豊富な知識や技術が必要となります。そのため、当社では、そうした天然生林施業に関する知見が豊富なスイスの森林管理者(フォレスター)を招聘するなどし、天然生林に関する知識や技術力の研鑽に努めています。
国内の天然生林は、戦後に人工林に置き換えられたため、天然生林で育つ広葉樹の枯渇が慢性化しています。特に広葉樹材を材料とする家具産業では、外国産の木材への依存が高まっています。当社では、人工林の一部を天然生林へと転換し、広葉樹資源の回復に取り組んでいます。また、国産広葉樹材の循環利用を推進するために、社有林から産出した広葉樹材を、本社の食堂テーブルや森林管理部門がある札幌オフィスの会議テープルや椅子といったオフィス家具等として活用し、まずは自社内で循環利用を実践しています。
間伐材を社会に供給
国内技術者を招聘した森づくり研修
本社食堂のビッグテーブル
社有林材が使用された校舎
2023年4月に開校した、社有林が所在する町内の小中一貫の義務教育学校の新校舎の梁や柱などに、当社が所有する早来山林にて、森林整備のために伐採されたカラマツ原木丸太が使用されました。
社有林は、会社の資産であると同時に、その地域を形成する重要な環境要素のひとつでもあります。適切な森林管理により、水源涵養機能、土砂流出防止機能、レクリエーション機能等の生態系サービスの質を向上させ、地域社会に貢献しています。
また、都市近郊に位置する社有林は、「環境林」として位置付け、地域の皆さまに自然環境を身近に楽しんでいただけるよう一部を一般開放しています。札幌市手稲区に所在する手稲山林は、市中心部からの交通アクセスが良く豊かな森林に恵まれているため、札幌市市民の森、自然歩道、青少年キャンプ場等の用途で一部を提供しています。また、地元NPO団体が主催する自然体験活動や、大学等の研究機関の研究フィールド等としても利用されています。こうした地域の皆さまに、より有意義に社有林を活用していただけるよう、それぞれの用途に適した環境に維持することが重要です。明るい森とするための間伐や、危険木の除去、遊歩道の整備等も積極的に行っています。社有林を地域の方に利用いただくだけでなく、植樹祭や育樹祭等の環境イベントを開催し、地域の皆さまに生物多様性をはじめとする森の大切さや楽しさを知ってもらう取り組みを積極的に推進しています。さらに、当社は、過去に発生した自然災害による被害地域で積極的な支援活動を実施しています。また、2016年に台風被害に遭った北海道森町町有林の復旧整備に取り組み、2018年に北海道胆振東部地震で被災した厚真町の保育園には、社有林の木を活用して製作したクリスマスツリーの寄贈、森林整備で発生した広葉樹の端材を用いて、自然との触れ合いの場としてマテリアルの森を活用していただいている保育園への木の卒園証書の寄贈等の活動を継続しています。
今後も、こうした積極的な取り組みを通じて地域社会に貢献し、地域の中に「マテリアルの森」がより一層価値あるものとして根付くよう努力していきます。
社有林で環境イベントを開催(樹名板の製作)
胆振東部地震で被災した厚真町保育園にクリスマスツリーを寄贈
従業員による森林の授業(北海道 上厚真小学校)
マテリアルの森での森林体験プログラム(札幌市子ども会育成連合会主催SDGsイベント)
当社は、社有林のある市町の小学生を対象とした教育プログラムの中で森林の授業を実施したほか、「マテリアルの森」を林業体験のフィールドとして提供しました。このプログラムでは、授業や動画で森林について学んでもらった後に、植栽や伐採作業などの活動を実際に見学・体験いただくことで、地域の森林について子どもたちに学びを深めていただくとともに、当社と地域との結びつきを深めています。
森林の持つ重要な生態系サービスのひとつにCO2の固定機能があります。当社は、日本国内有数の大規模森林所有者として、森林の適切な整備を着実に推進し、森林の有するCO2の固定機能を最大限に高めることで、地球温暖化の防止に貢献しています。現在、当社の社有林は、年間4.4万tのCO2を固定しており、これは国民約2万3千名分)と試算※されます。
樹木のCO2固定能力は、若齢から中齢期にかけて最大となり、その後は徐々に減少していきます。そのため、適切なタイミングで樹木の伐採を行い、新たな植栽や天然更新によって森林を再生させることで、長期的に森林のCO2固定能力を高い水準で維持するよう努めています。
また、森林整備に伴い発生する間伐材についても、利用可能な木材は林内に放置せず、積極的な活用を通じてCO2の固定に努めています。特に建築材や家具材など長期にわたり使用される優良大径材の生産を重視し、効果的なCO2固定に努めています。
大きく育ったカラマツ
樹齢と炭素吸収・排出量との関係
社有林は、多様な生物の生息地として非常に重要であるため、木材生産等のさまざまな活動が生物の生息環境に悪影響を及ぼさぬよう細心の注意を払っています。
特に、生物の移動経路である尾根林や河畔林等の「緑の回廊」は、野生動物の生息地の拡大や相互交流にとって非常に重要な森林であるため、原則として皆伐(樹木を全て伐ること)を禁止しています。木材生産を積極的に行う人工林でも、大面積での皆伐は生物多様性を低下させる可能性があるため、皆伐を実施する場合は、小面積かつ分散させるようにしています。また、現状が人工林であっても、効率的な人工林経営が難しいと判断される区域は、将来的に皆伐せず、より生物多様性が豊かな天然生林への誘導を目指しています。そのほかにも、伐採後に完全な裸地をつくらない「複層林施業」や針葉樹主体の資源循環利用区域においても自然に侵入してきた広葉樹を残すことで林内の構造を多様化させる「針広混交林施業」を一部で導入することにより、生物多様性の保全につながる森林整備方法も取り入れています。このようなさまざまな森林タイプを山林内に配置することで、山林全体としての環境の多様性を向上させ、生物多様性の保全に貢献しています。
また、動植物のモニタリング活動も積極的に実施しています。日常的な巡視活動や、山林内への多数の定点モニタリング地点の設置により、動植物の生息状況を定期的に把握しており、森林整備による改善効果、あるいは悪影響がないか確認しています。また、特に伐採を伴う森林整備を行う際には、伐採前後で動植物に悪影響が生じていないことを確認するため、別途モニタリング調査を行っています。伐採前のモニタリングにより、事前に希少動植物が生息していることが判明した場合には、影響を与えない作業時季や方法への切り替えや計画の延期等を検討します。
生息を確認した希少動植物種(環境省や北海道が定めるレッドリストにある上位危惧種)は、「三菱マテリアル社有林希少動植物レッドリスト」として取りまとめ、林内へ立ち入る関係者を対象に定期的に研修会を設け、生物多様性の保全に努めるよう注意喚起をしています。
(社有林管理経営計画書より抜粋)