Environment Protection Technologies 森の守り人

森の守り人(2016年)

2016年

2016年4月

雪解けは植栽の季節

植栽(しょくさい)の様子 植栽(しょくさい)の様子

カラマツの仮植(かしょく) カラマツの仮植(かしょく)

雪が解け、草木が目覚める春は、一年の中で苗木を植えるには最も適した季節であり、三菱マテリアルの社有林では毎年大忙しになります。特に、北海道にある社有林では、成長が早く強度も十分なカラマツや、北海道固有の樹種であるトドマツなどを1ヘクタール当たり約2000本と、非常にたくさん植えています。

まず植えようとする土地に適した苗木選びにはじまり、苗木が成長しやすい環境を作るための()(ごしら)え(ササなどを刈り払い、取り除くこと)、運搬した苗木が乾燥しないように仮植(かしょく)(植える直前まで土をかけておくこと)を行ってから、(くわ)などの器具を使って一本一本を丁寧に植えていきます。こうした作業は機械ではなく人の手で行うため、とても大変ではありますが、植えた木々が成長した姿を想像すると期待が広がり、いつの間にか苦労を忘れてしまいます。

もちろん、一度植えてしまえばそれで終わりというわけではありません。木が成長しやすいように下刈(したがり)(苗木周辺の雑草を刈ること)や間伐(かんばつ)(木の間隔を保つために適度に伐採すること)などを適切に行い、何十年もの長い年月で木を育てていきます。こうした中で、CO2吸収や水土保全などの機能であったり、その成長段階に応じて多様な生物の生活の場になったりと、木は様々な価値を発揮しています。最終的には、木材資源として有効活用するために収穫することになりますが、また苗木の植栽を繰り返すことで、木はその価値を保ち続けています。

私たちは、このように「伐る ⇒ 植える ⇒ 育てる」という森林のサイクルを確実に行って森の持つ多様な価値を向上させ、未来に繋ぐことで、人と社会と地球のために貢献していきたいと考えております。

トドマツの苗木 トドマツの苗木

カラマツ(植栽後6年目) カラマツ(植栽後6年目)

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2016年7月

JICA研修生がやってきた! ~生物多様性保全の取り組み~

JICA研修生と一緒に JICA研修生と一緒に

当社社有林管理の実務を担うマテリアルリアルエステート㈱森林部では、独立行政法人国際協力機構(JICA)が進める2016年度課題別研修「生物多様性保全のためのGIS・リモートセンシングを利用した情報システム及び住民参加型保全」の一環として、2016年7月21日、北海道札幌市の同社森林部事務所において、エクアドル、カンボジア、ミャンマー、ラオス及びボツワナからの海外研修生7名を受け入れ、実務に即した研修を実施しました。

JICAでは、途上国において、生物多様性に関する情報をより高度な手法で管理するための支援策として、林業・森林管理に携わる海外の研修生に日本の先進的な取り組みを紹介しています。そこで、今回、三菱マテリアルの社有林における全地球測位システム(GPS)、地理情報システム(GIS)などの技術を用いた生物多様性保全の取り組みに注目いただき、本研修が実現しました。

「GPS」とは、カーナビゲーションやスマートフォンなどでも身近な、地球上の位置の把握や記録が可能なシステムのことです。また、「GIS」とは、GPSで取得した位置情報や地形図などを、一つの図面上に重ね合わせて表示できるシステムのことです。
当日は、希少種であるオオタカやクマゲラの巣の位置をGPSで記録し、GIS上で地図として広く周知することで、彼らの繁殖時期に悪影響を与えないようにしていることや、尾根や沢など動植物の生息環境として重要な場所をGIS上の図で色分けして管理し、極力手を加えないことで生物多様性の保全に役立てていることなどを説明しました。

研修生からは「民間組織の取り組みが成功していることに驚いた」、「生物多様性の保全を森林管理に取り入れる良いアイデアが得られた」など、母国においても実践可能な取り組み事例として、高い評価をいただくことができました。

私たちは今後も社有林に生息する生物の多様性を尊重し、保全する取り組みを続けることにより、さまざまな環境問題の解決に貢献したいと考えております。

社有林の概要説明の様子 社有林の概要説明の様子
GPS・GIS活用事例の説明の様子 GPS・GIS活用事例の説明の様子

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2016年7月

夏は下刈したがり

下刈の様子① 下刈の様子①

下刈の様子② 下刈の様子②

毎年夏は、三菱マテリアルの社有林においても植物が最も盛んに成長する季節です。カラマツをはじめとする小さな苗木なえぎは、太陽の光をたくさん浴びて「我先に」と空に向かって背を伸ばし、数十年後には20mを超えるほどに成長します。しかし、植栽しょくさい(苗木を植えること)後3年〜5年の間は、苗木の成長が雑草に比べて遅いため、周りを雑草に囲われてしまい、太陽光を十分に得られずに枯れることがあります。 そこで、周辺の雑草を刈り払う「下刈したがり」を行うことで、苗木の成長を守っています。

下刈は、まず作業前に苗木の樹高じゅこう(地面から木の頂点までの高さ)を測定し、周囲の雑草の生え具合を確認します。その上で、刈払機かりはらいきを使って苗木を傷つけないよう丁寧に雑草だけを刈り取ります。

三菱マテリアルの社有林では、毎年数百haもの面積(平成27年度は約200ha、東京ドーム約42個分)で下刈を行っていますが、人の手による作業のため、多大な時間と労力を要します。また、炎天下での作業のため、熱中症やスズメバチ等の危険生物に注意する必要があります。さらに、刃物を扱うため、作業を行う人同士が十分に距離をあけ、傾斜地では上下方向に並ばない等、安全に対する配慮も必要です。

このように、下刈は手間のかかる作業ではありますが、今は小さな苗木であっても一本一本が立派に成長し、数十年後には素晴らしい森に変化してくれることを期待しながら、私たちは社有林を大切に育てています。

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2016年10月

秋は間伐かんばつ

夏が終わり、秋の足音が聞こえてくる頃、三菱マテリアルの社有林ではカラマツをはじめとする植栽木を対象に間伐かんばつを行います。

間伐とは、成長にともなって混みすぎた林の木を一部抜き伐ることです。最初は小さな苗木ですが、植えてから15年もすれば大きく成長し、隣り合う木と木の枝や葉が重なりやすくなります。そのまま放置すれば太陽の光が十分に届かず、幹の細い弱い木になってしまいますが、間伐を行うことで林の中に差し込む太陽の光を増やし、再び活発な光合成を促すことで、立派な太い木を育てることができます。
また、林の中が明るければ、木の周りにさまざまな植物が集まって力強く根を張り、地下水を適度に溜めてくれる機能もあることから、豪雨等の災害時に土砂の流出を防ぐことにも繋がります。

一口に間伐と言っても、木々の混み具合は場所ごとに異なるため、方法は必ずしも同じではありません。そこで重要な作業が選木せんぼくです。
木の形状、幹の太さ、樹高じゅこう(木の高さ)、樹冠じゅかん長率ちょうりつ(木の高さに対し、葉のついた枝がある部分の割合)、隣の木とのバランスなど、さまざまな視点から判断することで、実際の森林の状況に応じて木を伐る量、木の残し方などを変えています。選木によって将来の森林の姿が決まるとも言えますので、三菱マテリアルの社有林を管理するマテリアルリアルエステート㈱森林部では、定期的な勉強会の開催や作業現場から提案を受けた改善案の振り返りなどを通じて、選木の技術を高める取り組みを進めています。

私たちは適切な間伐によるたくましい森林づくりを目指しており、間伐により伐り出した木材についてもできる限り再生可能な資源として世の中に送り出すことで、人と社会と地球のために貢献してまいります。

間伐作業の様子
間伐作業の様子

間伐により明るくなった林内
間伐により明るくなった林内

選木に関する勉強会の様子
選木に関する勉強会の様子

三菱マテリアル株式会社