Environment Protection Technologies 森の守り人

森の守り人(2018年)

2018年

2018年1月

外部の研究機関等と連携した生物多様性保全

三菱マテリアルの森は日本全国31箇所、合計約14,500haと広大な地域に存在するため、生物多様性保全を進めるにあたっては、外部の研究機関等のご協力も不可欠です。

たとえば、大型で希少な猛禽類であるクマタカ(環境省レッドリスト:絶滅危惧IB類)を林内で確認した際には、生息情報を社内に留めるのではなく、研究団体と共有して森を開放し、生息調査を行っていただいています。これにより、クマタカの生態解明に大きく貢献するとともに、生息状況を、より専門的な視点で把握することが可能となるため、今まで以上にクマタカに配慮しながら森林整備を行うことが可能になります。

また、林業試験場が実施するクマゲラの生息調査や、市町村が実施する絶滅危惧植物の調査、酪農学園大学等が実施するヒグマの生息実態調査など、外部の各種調査機関に森を解放することで、私たちだけでは手の届かない広大な範囲まで、多面的な視点から生物多様性の保全に繋がるさまざまな活動を展開しています。

私たちは、自社で行う地道な動植物のモニタリング活動等に加え、外部の研究機関等と連携し、より効果的な形で生物多様性保全や環境保全に努めてまいります。

「北海道クマタカ研究会」の方々が、木を登ってクマタカの巣内を調査する様子 「北海道クマタカ研究会」の方々が、
木を登ってクマタカの巣内を調査する様子

社有林上空を飛翔するクマタカの幼鳥(上記北海道クマタカ研究会撮影) 社有林上空を飛翔するクマタカの幼鳥
(上記北海道クマタカ研究会撮影)

社有林内の定点カメラによって撮影されたヒグマ(札幌市提供) 社有林内の定点カメラによって撮影されたヒグマ(札幌市提供)

森林には、木材生産のほかにも二酸化炭素の吸収を始めとする地球環境の保全や、生物多様性の保全、土砂災害防止、水源かん養などの多面的機能があります。そうした多面的機能を発揮するには、森の状態を調べ、適切に管理しなければなりません。
このコーナーでは、豊かな森を次世代に残すために、わたしたちが日頃、どのような取り組みを行っているかをご紹介します。

※ 当社は、社有林管理の実務を子会社である「マテリアルリアルエステート㈱」に委託しておりましたが、2018年7月1日付で三菱マテリアル㈱総務部総務室が所管することと致しました。

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2018年4月

社有林内・樹木のご紹介 ①「カラマツ」

今回から1年に亘り、「三菱マテリアルの森」で生育する代表的な樹種について、その特徴やエピソードをご紹介いたします。第1弾は「カラマツ」です。

カラマツは主に寒冷地に生育し、成長が早くて丈夫な材質であるため、北海道ではかつて炭鉱の坑道を支える坑木用途で積極的に植林されていました。また、日本の固有種の中では唯一葉を落とす松で別名「落葉松らくようまつ」とも呼ばれており、降雪前にカラマツ林が一斉に黄葉すると、一面は美しい黄金色に染まります。

カラマツ材は強度に優れ、赤みのある独特の美しい風合いがあるなどの利点がある一方、乾燥後にねじれによる割れや狂いが出やすい難点があります。そのため、坑木以外の活用としては梱包用材やパレット材などの資材用途が中心でした。しかし、近年では板状の木材を貼り合せて加工することにより、合板材や集成材として建築材などで活用される事例が増えています。また、木材の乾燥技術自体も大幅に向上しており、カラマツ材を丸太そのまま、あるいは切り出して柱等に活用する無垢材むくざいとしての利用も可能になりつつあります。

なお、北海道における三菱マテリアルの森では、現在もカラマツ、グイマツ、グイマツ雑種F1などのカラマツ系の樹種を中心に植栽しています。一般的にカラマツを植えてから伐採するまでの期間は30~50年程度と言われていますが、カラマツ材が今後も建築材などの幅広い用途で需要があることを想定し、三菱マテリアルの森ではカラマツを伐採するまでの期間を延長し、より太く、高付加価値のある大径材を生産することを目指しています。

また、余談になりますが、カラマツ林を経営していると、木材生産以外に思いがけない副産物を得られます。毎年夏の終わりごろになると、地面からハナイグチ(別名ラクヨウ)というキノコがポコポコと頭を出します。ハナイグチは見た目の愛らしさに加え、キノコ狩りでは大人気の食用キノコであり、これからも貴重な森林資源として守っていきたいと思います。

黄金色に色づく晩秋のカラマツ林(早来山林) 黄金色に色づく晩秋のカラマツ林(早来山林)

社有林カラマツ材で製作したパンフレット棚(マテリアルリアルエステート㈱森林部応接スペース) 社有林カラマツ材で製作したパンフレット棚
(マテリアルリアルエステート㈱森林部応接スペース)

カラマツ林に顔を出すハナイグチ カラマツ林に顔を出すハナイグチ

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2018年7月

社有林内・樹木のご紹介 ②「ミズナラ」

寿命が500年を超すという「ミズナラ」 寿命が500年を超すという「ミズナラ」

第1弾のカラマツに引き続きご紹介する樹種は「ミズナラ」です。

ミズナラは落葉性の広葉樹で、縁がのこぎり状にギザギザと波打つ大きな葉を持つのが特徴で、秋には皆さんおなじみのドングリの実がなります。ミズナラは日本全国の山地に広く分布しており、三菱マテリアルの森にも多く自生しています。ミズナラは寿命が500年を超す事もあるくらい長寿な木で、時には直径が1mを超します。

ミズナラ材は重くて固く、また、はっきりとした年輪が美しい木材で、高級家具材として欧米に輸出されていた事もあるほど優秀な木材です。また、家具に使用できないような細い木でもシイタケ栽培用のほだ木としても適しているほか、多少の曲りなどがある木でも、薪ストーブ用の薪や、木炭などとしての利用価値も高く、いずれの用途でも重宝されるオールラウンドプレーヤーです。

ミズナラをはじめとした広葉樹は、主に天然の森で産出されものであり、自然のサイクルに大きく背くような手法では持続可能な資源維持はかないません。開拓以前の北海道では、このミズナラをはじめとした巨木が数多くあったと言われており、そこに暮らすアイヌの人々はそれをむやみに伐採することなく、必要最小限の利用に留め、決してその調和を乱すような事はしませんでした。アイヌの人々にとって持続可能な資源利用の考え方というのは、その自然の中に生きる者として当然のことのように根付いていたのです。

私たちが管理する三菱マテリアルの森においても、ミズナラをはじめとした広葉樹林の資源を、旧来の豊かな姿に近づけていくことを念頭に置きつつ、その素晴らしい木材を持続可能な範囲で社会に還元していく事は、とても大きな課題の一つだと考えています。

大木も小さな実生(苗木)から 大木も小さな実生(苗木)から
細い枝木は、シイタケ栽培の「ほだ木」として活用 細い枝木は、シイタケ栽培の「ほだ木」として活用

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2018年10月

社有林内・樹木のご紹介 ③「スギ」

社有林産のスギを製材する様子 社有林産のスギを製材する様子

社有林の樹種を紹介する第3弾は、皆様おなじみの「スギ」です。

スギは日本固有の常緑針葉樹で、屋久島の縄文杉に代表されるように、時に直径10m、樹高50mに達し、寿命が長いものは2,000年を超えるものもある樹種です。本来の自然分布は本州北端から屋久島までとされていますが、植林が容易で建材としての高い需要が見込まれたことから、戦後は日本全国に植林され、現在では北海道の道南地方までスギの植林地が見られます。

スギ材は幹が真っ直ぐに通っていて加工がしやすいため、主に住宅の「柱」材として古くから用いられてきました。近年では複数の板を張り合わせて作る集成材としても用いられ、大型の建築物にも活用されるようになっています。当社が管理するスギ林から伐り出したスギ材も「新国立競技場」のスタジアム外周部の軒庇(のきひさし)として活用される予定です。

50~60年生前後のスギ林は日本全国に実に多く存在します。この隠れた財産を如何にして有効活用していくか、また、この増えてしまった部分のスギ林を将来的にどうしていくかといった選択は、今後の日本の森林を形成する上で、非常に大きな分岐点になるといえます。当社ではその一つの答えとして、スギ林の間伐を繰り返してその健全性を保ちつつ、間伐で生じた空間に生えてくる天然の広葉樹等を育成し、多様な樹種による混交林化を促すことで、災害に強く、将来的に価値の高い森に育てていくことを目指しています。

スギ林の調査(生野山林) スギ林の調査(生野山林)
冬のスギ林(森山林) 冬のスギ林(森山林)
三菱マテリアル株式会社